真・三國無双6の応援小説「蜀漢残思」の第14話です。
早くDLC欲しいなあ~PSN復旧しないかなあ~?
もちろん、お詫びとしてソニーからユーザー一人あたり最低3000円以上のチケット配布つきで。
なんてな。

§ 今日の無双閑話 ♪

イメージCVです。書く時イメージする声優さんです。

劉 禅(公嗣) 松野太紀
星 彩 野田順子
司馬 昭(子上) 岸尾だいすけ
王 元姫 伊藤かな恵

姜 維(伯約) 菅沼久義
鍾 会(士季) 会一太郎

劉 淵(元海) 宮野真守

禿髪 樹機能 藤原啓治
禿髪 倚悝 杉田智和

高然弗(高句麗王)真矢野靖人
王 祥(休徴) 秋元羊介
黄 皓 中尾隆聖
楊 駿(文長) 矢尾一樹

司馬 炎(安世) 平川大輔
司馬 攸(大猷) 山本和臣

曹 奐(景明) 鈴村健一
曹 志(允恭) 柿原徹也


第14話 司馬炎、心知れず。元姫に危難迫る

 市街外れの亭。半ば引き摺られるように元姫に連れてこられた炎は、元姫の指差す椅子に坐らせられた。
 そして、いつ買ってきたのか、酒が入った水筒を突きだし、炎の胸元に押しつける。
「ほら、呑みなさい。まだ、呑み足りないんでしょう」
 静かで、激しい怒気が雷の如く炎を打った。大きながたいの炎が、小柄な元姫に圧倒されている。
「お、お赦し下さい母上っ。わ、私が軽率でした」
 ただ平謝りを繰り返す炎。
「軽率? 何が軽率なの?」
「は、母上……」
 静かで、鋭く突き刺す眼差し。困惑する炎。
「何が軽率かも分からないで、何故軽率なんて言えるの?」
「で、ですからそれは――――」
「考えなければ分からないことは、軽率とは言わない。それに、あなた自身、そう思っていないって事よね」
「…………」
 炎が恥じ入り、言葉を失う。
 元姫が炎の眼前に屹立する。可憐な麗姫が、母性の威厳を放つ。
「あなたは、いつか子上殿の後を継ぎ、この国を導かなければならない。わかってる?」
「はい……母上――――」
「前にも言ったけど。遊ぶな、とは言わない。それを自覚しているのならね。……でも、時と場合を考えたら? だらしなさや、やる気のないところまで、子上殿の真似をしないで……ね」
「ただ、ただ……恥じ入るばかりです」
 炎がしゅんと縮こまってしまう。そんな炎の様子に、元姫の棘がすうっと抜ける。そこは、やはり息子だからだろうか。

「それと……楊駿殿とは、あまり付き合わない方がいい」
「それは――――何と仰せられる。文長は我ら司馬一族にとっては……」
 言いかけた途端に、元姫は心痛の色を顔に滲ませた。
「わかっている。楊駿殿が子上殿に召し抱えられて、あなたが特に信頼を寄せていると言うこともね」
「はい……」
「……でもね。彼には――――」
 元姫が言いかけた時だった。それまでただ沈黙していた炎が、毅然と顔を上げて、元姫を睨視したのである。

「母上。この炎も晋公司馬子上の嫡子として人を見る目はございます。楊文長は我が家によく奉仕し、誠実にして気が利き、炎の足り無き部分をよく補佐してくれます。当に周公旦、荀文若に比しまする」
「――――!?」
 周朝八百年の大功臣、曹操の名軍師を引き合いに出され、元姫は言葉を失う。
「あなたにとって……それほどまでに彼のことを――――」
 寂しさを強く滲ませ、瞳を細める元姫。彼女でなければ今にも泣き出してしまいそうだ。
「まあ、見ていて下さいよ母上。ちょっと羽目を外してしまいましたが、この炎もやる時はやりますよ。……いずれ母上には無上の歓びに与って貰いますから」
「…………」
 普段の元姫ならば矢継ぎ早に説教を浴びせかける。しかし、今それをしない元姫を見て、炎は自分の言葉を納得してもらえたのかと思い、笑顔を浮かべた。
「祖父さま、伯父上から父上に受け継がれた大業は、この炎もしっかりと、肝に刻んでおりますゆえ!」
「そう……」
「――――っと、あ、母上。せっかくですから、この御酒、頂きます」
 まるで鶏のように頸をこくりと動かして炎は押しつけられた水筒を拝し、これ以上何かを言われる前に立ち上がり、遁走してしまった。王元姫

「…………」

 独り残った元姫は脱力したように、炎が坐っていた場所に腰をどんと落とした。沈着冷静な彼女も、息がつまりそうなほどに不安と悲しさに全身が包裹される。
「だめね……私も――――結局……子供には、甘い……」
 自嘲気味に呟く。
「子上殿には強く当たれるけど……ほんと、おかしいわね」
 その時だった。遠方、炎らが過ごしていた酒家の方角から酷く酔った数人の男たちが千鳥足と言うには生やさしい足取りで現れた。元姫の姿を見て、その中の一人が、嬉々とした声を上げる。
「お、綺麗な姉ちゃん発見ー! がははは」
「んん、おおっ、見ろよあの胸っ、やばすぎじゃんよ」
「ひょっほー、カワイイ!」

 王元姫と気づかないか、知らない連中のようだ。
(北狄の居留民……ね。ふぅ……こんな時に――――)
 元姫が袖をまさぐり、鏢に手を伸ばす。
 予想通り、男たちがなれなれしく近付いてきた。
「おう、お姉さん。カワイイね。何やってんのこんなところでサ」
「一人なんだったら、どう、これから一緒に呑まねえ?」
「綺麗な子に淋しい顔は似合わないよ。楽しいことしようよ、俺たちとサー」
(ほんと……男って……)

 素早い身のこなしで後背に跳躍し、元姫は鏢を広げて敵を叩きのめす――――。

 はずだった。
「ねえ、何とか言ってよ、カワイイお姉さん」
 太ももに力を入れ、跳躍をしようとした刹那の寸前に、元姫は鏢を持つ方の手首を男の一人に鷲掴みにされてしまった。
(! ……しまった――――)
「どうしたの、そんな淋しい顔しないでよ。俺たちが慰めてやるからさー」
「……やめて……」
 腕を取られた元姫がようやく声を上げた。
「お、ようやく喋ってくれた、あはは」
「離して」
 きっと睨み付ける元姫。
「うっひょ、顔だけじゃなくて、声までカワイイお姉さん。最高」
「離してって言ってるでしょう、聞こえないの」
「いいね、いいねー。その反応。気の強い娘って、好きなんだよね」
「酒家の女らは無駄に従順でつまんねえもんな、ぎゃははは」
 酔余の大声で話す男たちの隙を衝いて逃れようと元姫は力を入れる。しかし、北狄の居留民たちの膂力は中原の男たちとはまるで違っていた。固められた腕が、もともとか細い元姫の力では微動だにしなかった。
「さって、ほんじゃ行きますか、ねえ」
 酒臭い息を吹きかけられ、元姫の顔が嫌悪に歪む。
「やめて、離して!」
 いつものような冷静な声色ではない、少女のような甲高い声。男たちの力で捕らわれ、もがいても意に返さない。その様子を却って愉悦の目で眺めまくる。

「誰か……助けて――――!」