アマガミ真田流塚原響編、人気サブキャラを見事補完す

アマガミ・塚原響篇 恋愛シミュレーションゲーム・アマガミにおける絢辻詞や七咲逢など、メインやサブを問わず人気キャラクタが目白押しの中で特に異彩を放っていたのは、メインヒロイン格の森島はるかの親友という設定の塚原響である。
非攻略対象のサブキャラクタであり、本編中においても主人公・橘純一に対して恋愛感情を想定するような言動は無く、出演も目を惹くような程でもない。
だが、鷹岑も含めて塚原響の人気の高さというのは2009年10月23日に鷹岑家文書において記載している「鷹岑昊のTOD的こころPart.48」に代弁しているのだが、塚原響の良さというのは、攻略対象のヒロインとは一線を画した「普通」さにあると、ひと言で言うならばそうなのであろう。

◆攻略対象にならない魅力

ゲームに止まらず、漫画やアニメなどで恋愛ものを扱っている場合、攻略対象(主人公と恋愛関係になる可能性のあるキャラクタ)は、それぞれ魅力的な個性を 以て主人公に関与してくるわけだが、それは言い換えれば極めて非現実的なヒロイン像と言うことになる。「萌え言葉」などというように、あからさまに現実社 会で駆使するような女性が殆どいないような中で、サブキャラクタというのは、極めて現実社会に近しいキャラ設定が求められる。
塚原響というのは、そういう意味において、頭脳明晰な上そのしっかりさと、森島はるかに対する世話焼きの点、ギャルゲーにおいては確かにヒロインとしては物足りないものがあるように思えるビジュアルを別にした魅力というものがあった。
彼女は現実社会を考慮すれば確かに恋人と言うよりは妻、奥さんにするならばこの人というタイプのキャラクタであり、ヘタレタイプの男からすれば、最も魅力的な女性なのである。だから、比較的高い年齢層に支持があるキャラクタであると言えるのだ。

真田鈴氏、塚原響を見事補完

エンターブレインによる公式コミックアンソロジー・アマガミ-various artists-において、塚原響篇の実質的な連載を敷いていた真田鈴氏だが、サブキャラクタを主眼とした作品は実は恋愛系ゲームの公式派生諸作品においては異例である。
この塚原響篇完全版である“すなおのそのあと”の中で、真田氏は塚原編への意気込みを個別話の間に掲載されているコメント欄にて述べているのだが、やはりサブキャラクタを中心としたストーリー展開というのは、手探りだったと言うことである。
本来、公式ゲームでは攻略非対象であり、主人公に対する感情も明確でない以上、主人公との恋愛関係に踏み込むというのは本当は同人の域になる。エンターブ レインが開発したアマガミと、そのエンターブレインが発刊しているコミックアンソロジーの中で、塚原響篇を採用し、こうして話の顛末をまとめた単行本の発 刊に至ると言うことは、塚原響というサブキャラクタが、主人公である橘純一に想いを抱いていたということを公式として認めたことになるのであり、そういう 意味では実に画期的な作品であるとも言えるのである。

真田氏がアマガミのキャラクタの中では塚原響を強く推していると言うことはこの作品全体の流れから見れば十二分にそのコンセプトが伝わる。
ストーリー自体は確かに目新しくはなく、オーソドックスな恋愛譚であり、主人公との結婚で終結する訳なのだが、作者の意欲・コンセプトというものが読み手側に伝わる作品作りそのものが貴重なのである。
この作品の特長はコミックアンソロジーで伝播された、真田氏の理念が結実したものだと言っても良いだろう。それに裏打ちされて、塚原響篇を想定した流れで、見事にそれを補完できたのである。

2011/10/01記述