誠温行意、孤独の少女を済いて大いに強権に挑む

――――強く惹かれ合う、冴えなき少年とトップアイドル

第15話考察

仕組まれた出会いだと言う琴音。納得できずも黒河と行動を共にする遥の 寂しげな表情に宗太は訝しむ。遥に惚れているのかと訊ねる黒河に、宗太はそうだと強く言う。しかし遥は黒河が好きだと答える。これまでを振り返った宗太は 遥が本心ではなく言わされていると確信し、遥を問い詰める。ありのままの遥の姿が好きだという宗太の言葉に遥はついに号泣し、家族が圧力を受けていて止む なかったと話す。遥を抱きしめて胸の中で泣く遥に、俺が絶対守ってやると誓う。

“誠に温って意志を行う”宮野宗太、気丈な少女を抱擁す

今回のハピプロは先週のGE~グッドエンディング~に続いて非常に良い話で、何度も読み返したくなる内容である。
西倉琴音の本性曝露以来、大幅に化けたハピプロですが、宮野宗太は静かなる炎とでも言った方が良いのか、それを鷹岑は「誠に温(なら)って意志を行う人」であると表現しているのですが、果たしてそうだろう。誠温行意
宗太は一人の女性をどこまでも追いかけ、その女性のためならば油を浴びて火中に飛び込んだり、重い錨を背負って日本海溝の真上から飛び降りることも厭わないような性格ではない。
だが、彼の温かな誠心は真っ直ぐに相手に届き、頑なな心を融かしてゆく。確信したことは例えそれが自分のためにならなくても、意志を貫く勇気のある少年だ。
「あなたには幸せになって欲しい」。宗太のこの言葉の本質が、誠温行意なのである。

弛まなき温かさが、遥の心を強く惹きつける

ハピプロの世界・ネオ日本がどういった選挙制度なのかどうかは分からないが、遥を苦しめる黒河龍也の父・龍蔵の行使する強権は宗太の弛まない“温かさ”、一貫した誠温行意の下では張りぼてのうたかたの権勢に過ぎない。遥とお守り
龍也はというと、こう見えて意外と独占欲が強く傲慢であるので、遥の心が自分に向いていないことを知った途端に、ドメスティックバイオレンスに奔る危険性がある。
鷹岑が言わずとも、遥が身を犠牲にしてまで家族を救済するくらいならば、宗太の温かさに賭けてみた方がよほど潔い。

仮に遥が龍也と強制的に結縁したとしても、宗太から贈られた御守を破棄することは絶対に無いだろう。
「ずっと一緒にいて忘れかけてた」と宗太が吐露していたように、素顔の彼女自身を見つめていた、見つけてくれた宗太のことを、人知れず孤独の闇に藻掻いていた遥は何よりも嬉しく、またそんな宗太に強く惹かれてゆくことは自然なのである。
御守は遥の心は宗太にあり。という直接的な恋愛感情よりももっと広い意味で、彼女自身が誠温行意に応えたいという、彼女らしい芯の強さを示しているとも言えるのだ。

成算無き匹夫の勇か、柔よく剛を制す驍勇の烈士か

ハピプロの名場面となり得るだろう、宗太が遥を抱きしめるシーンは非常に印象的だ。
抱擁「俺が好きになった」という遥こそが、飾らない彼女の素顔。この言葉が、ギリギリの精神力で突っ張っていた遥のたがを外してくれた。
宗太の胸の中で号泣する遥の姿に、読者諸卿もグッと迫るものがあっただろう。
やむにやまれぬ事情で望まない縁を結ばされ、それを断ち切らんと立ち向かう主人公。そんな描写自体は世の恋愛作品を探し回れば良くあるような事なのだが、 それでもこうしてグッと来るというのは、やはりなんだかんだ言っても王道の恋愛経緯こそ魅力があるというもので、複雑怪奇でダダすべりの惰性的なラブコメ などより百倍は面白いものだと言うことだろう。
誠温行意の宗太でなくても、遥を強大な政治権力から「守ってやる」「絶対に守ってみせる」と誓うことが出来るかどうか、ハピプロの読者諸卿ならばどうだろうか。遥はタイプじゃない。俺は遥以外の子がタイプだ。などと逃げずに、一度考えてみて欲しい。
ちなみに鷹岑がこの宗太の立場になったならば、たとえ社会不適合者の烙印を押されても、世論に訴えることをしますかね。人権なきこの制度の是正を求めて行くことにします。長い道のりですが、権力はうたかた。強権は必ず潰えます。
私は宗太のような誠温行意の人間では無いので、「絶対に守ってみせる」と言うよりも「守りたい」気持ちを続けることが大切だと考えます。

宗太と遥はもしかすれば結ばれないかも知れませんが、それでも「あなたには幸せになって欲しい」という誠温行意に絆された神木遥は、ハピプロを経て大きく成長することになるのでしょうね。結ばれるのが一番ではありますが(笑)

第15話台詞ピックアップ

今までありがとう これからは‥‥(扉絵アオリ)

制服姿の寂しげな微笑みの遥。宗太の誠温行意にほだされた遥の姿か。

――あぁ そうだよ!(宮野宗太)

遥の面前で、黒河龍也の問いかけに毅然と答えた宗太。一貫した彼らしい温かさである。

黒河君のことが好き‥‥!(神木遥)

役所の窓口のようなトーンで言わされているということが良く分かる表情だ。

どこ行ったんだよ!!(宮野宗太)

「君には幸せになって欲しい」そんな宗太の誠温行意は遍く、琴音や遥の本当の心を貫徹していたのだ。

もう全部‥決めたことなんだから‥‥(神木遥)

宗太にほだされ、ついに号泣する遥。この場面でグッと来る読者も少なくは無かっただろう。

俺が絶対守ってやるから!!(宮野宗太)

百の美辞麗句、万人を平伏させる政治権力。宮野宗太の誠温行意に、遥はその胸に抱かれて、ただ号泣する。名実共にハピプロの名場面だ。