宮野宗太、怯み翳る自己真意

――――2ヒロインの板挟みに遭い、真意を逃避する


楓来島から二日目、ボランティアの弁当を誂える楓に懸想する須藤。一 方、ボランティアに同伴していた宗太と遥。宗太は遥のためにと、楓に協力してもらって作ったという弁当を差し出す。笑顔に戻った遙に、宗太は納得をするま で待つからと言う。帰ってきた宗太に、楓はキスの話題を持ちかけ、まだと答える。さらに遥は女優だからいろいろ経験しているだろうと勘ぐる宗太に、楓は突 然キスをした。同じ話題で盛り上がるリビング。遥は実際に経験したことはないという。宗太は楓の行為を思い出し、狼狽する。

伊藤誠化か、西園寺世界化か

宮野宗太が伊藤誠(SD)のように見え、奥山楓が西園寺世界のように見えてきたのならば立派なハピプロファン(笑)とは笑って冗談、笑って許してとはなか なか言えない。
神木遥への想いを知っている奥山楓が奥山楓ああいう行動に出たことはまさにいつか見た光景である。

まあ、そもそも連載当初からとでも言うのか、初期設定からだとでも言うのか、奥山楓が宗太を好きでいると言うことは理解の中にあって特段驚くべきことでは ないのだが、実に早期の段階でストーリーの中枢に割り込ませたなあと言う印象がある。

ビッチ・悪女。世に数多あるラブコメには必ず存在するキャラクタ設定ではあるが、楓が早晩にそうした片鱗を見せてきたということは、物語的には良いことな のかもしれない。
桂言葉に想いを寄せる伊藤誠に横恋慕をする西園寺世界。激動のスクールデイズはここから始まったとも言えるのだが、考えてみれば、ハッピープロジェクトと いう世界はそんなことを言っている暇はないのが大前提であった。

待って逃げず、自らの心に問答を

神木遥宮野宗太が神木遥に対した時に、「納得するまで待つ」と言ったことは、非常に危惧を感じる。
宗太は自らの思いに直面することを避けてはならない。遥の答えは決まっているのだから、宗太がどうしたいのか、受け身をして現実から逃げず、誠恩行意の信念を自分自身に向けなければダメだ。
少なくとも、遥はこの会で宗太が言った言葉を望んでいたわけでは決してない。彼女との距離が縮んだと満面の笑みを浮かべる宗太は認識が甘いと言わざるを得まい。

奥山楓・神木遥の暗闘と宗太の浮遊

先手必勝とでも言うのか、理由や憶測はどうであれ、奥山楓が宗太に対してキスという物理的先制を仕掛けたことは特筆するべきであり、先制彼女自身もまた、ハピプロの世界がどういうものなのかということを深く理解している一人であるということだろう。
昼盗人というには語弊があり、薫蕕器を同じくせずというのも似つかわしくはない。
楓は基本的に自らの想いを偽装しながらも真っ直ぐでぶれてはいないので、ある意味手強いものである。

ただ、キャラクタ個人としてみた場合、やはり鷹岑は楓よりも遥の方がよい。
やはり、どんなに良い子であっても、自らの想いを偽ったり隠したりするようなことはあまり感心しない。それで余計事態が悪化したら本末転倒であろう。

第20話 名言蒐懷

女心を男は知らず‥‥(扉あおり)

バブル時代はそれでも良かったのかもしれないが、今のような時世では、「何とかの心と秋の空」をいちいち忖度してゆくと言うことの方が少なくなってきているような気はする。
扉絵は、和傘を差した奥山楓。筆致の上達が著しい(笑)

楓に協力してもらって‥(宮野宗太)

本来ならば、こういうところは嘘をついて「俺が作った」とだけ言えば良いのかもしれないが、そこはさすが宗太である。まあ、言わなくてもいずればれるのだが。

納得するまで待つから!!(宮野宗太)

遥の答えはすでに決まっているのに、何を待つというのか。宗太は遥にボールを押しつけるようで、自身の決意・決断から逃避しようとしている。この言葉はあまり良くない。

‥‥ね?(奥山楓)

まさに、西園寺の世界。

好きな人としたいから!(神木遥)

次回以降、遥が宗太とキスをすると一気に宮野宗太がへたれの烙印を押されかねない。‥すでにへたれなのか(笑)