須藤・西倉共闘の構図、実質は宮野宗太を指向

――――須藤雅人、三枚目の悲劇に徹するか注目

楓が参入し、ますます波瀾含みの六丈島組。須藤雅人は楓を、西倉琴音は 黒河龍也を目当てに利害が一致し、共闘関係を結ぶ。楓の歓心を買おうと手をこまねく須藤に、琴音は協力する。楓との距離が少し縮んだと思った須藤は琴音に 感謝するが、その様子を黒河龍也が仲が良いと誤解し、琴音は強く後悔する。

六角関係の絶対概念、主人公・宮野宗太

今回は宮野宗太・神木遥の二人の出番はほとんどなく、須藤・西倉・奥山を中心とした物語を構成した。宗太を中心とした異世界ラブコメの様相が、そういった 展開を見せることによって基軸要素である“ハッピープロジェクト”そのものに焦点が当てられたものであるという証明になった。
キャラクタ個々に対する恋愛テーマではなく、当作のタイトルである「ハッピープロジェクト」、つまり世界設定そのものに軸足を置いた物語の場合、主人公が 登場しない回というのは必要である。しかし、その主人公を出さない話というのは傍目から見れば「閑話」そのものであり、意外にも難しいものである。

落合氏が第21話時点で視点をサブキャラに移した場面を描いたのには一定の評価は出来るのだが、途中で宗太が一部登場していなければ、もっと良かったと言える。
楓・須藤・黒河ら鷹岑の考えは、脇役主体の話を進める場合はその章に一コマでも主人公は出さない方が良く、またその方がかえって主役を引き立てる効果があるものではないかと考えるのである。

さて、今回はサブタイトルに六角関係と銘打っているのでひとつ検証をしてみよう。
宮野 須藤 黒河
神木 西倉 奥山
こうして見た場合、果たして額面通りの六角関係なのだろうか。
基本的にそうは銘打っているとはいえ、鷹岑は実質女性陣の指向は宮野宗太にあると考えている。
まあ、西倉琴音編に関しては、一応終わったとはいえ宗太に対して悪感情はない。須藤は三枚目役に徹して恩恵に与るとしても、黒河龍也がその関係の一角を示しているという風にはなかなか思えない部分がある。
こういう物語は往々にしてヒロイン格のキャラは主人公を絶対概念として捉えているので、そこから分派してゆく課程が、見物であるのだろう。

第21話 名言蒐懷

ヤンチャ(須藤雅人)

須藤の言動を見ると、作者落合氏の経験を反映させているキャラのようにも思える。

じいちゃんの浮気(西倉琴音)

このモノローグを見た瞬間、そらのおとしもの(水無月すう氏)の主人公・桜井智樹のじっちゃんを思い出した。

大人と子供の部分を併せ持っている人(奥山楓)

10~20代の若年層の大部分の男性はおそらくそうではないだろうか。楓の言ったことを額面通りに受け取ると、実は非常に広範囲となる。

お前らってそういう仲だったんだ?(黒河龍也)

典型的な誤解パターンだが、黒河は彼らのことよりも、宗太凋落のことで頭がいっぱいのようである。