ストーリーか、お色気か。ぶれたOAD

君のいる町・第18集君のいる町・第18集

ストーリー等総合評価★★ / 筆致評価★★★★★

第165話~第174話、本誌2012年第15号に掲載された「涼風」の番外編が収録。
粗筋としては、御島明日香との別離騒動で絶交した広島組・東京組との全面和解が描かれています。

私は前・第17集の限定版を、購入直前で断念し、第18集も限定版の購入に至らなかった。
最大の理由は、アニメ版に最も必要な原作の基本理念よりも、脚本家オリジナルの色彩が強いとされる内容に疑問を呈したからである。

当 該第18集が発売される集の本誌第28号の瀬尾氏の目次コメントに「ラストシーンがめっちゃエロいですよ!マジで!」とあるのですが、君のいる町の本来の コンセプトは一体何か。と言うことを考えた際に、ただお色気・サービスシーンを組み込めば良いという、最近の連載で特に目立つ、ラブコメで最も危惧するべ き安直な手法に恃んでしまっていることが誠に残念でならない。
エロさを求めるのであれば、中途半端なOADというジャンルで生煮えのお色気・サービスシーンを提供するよりも、いっそ18禁指定のアニメーションでも作った方が、よほど潔いのである。
また一応、広島県庄原市とコラボレーションをし、観光振興を銘打っているのであれば、そう言う男性視聴者・読者の歓心を買う姿勢が前面に出るのは少し忌憚に触れる次第だ。

肝心の中身だが、枝葉柚希との復縁そのもので本来のメインストーリーは終結しているので個別の話は既存キャラの使い回しによる閑話の連続で、取りわけて目を引く話はない。
しかし残念なことに、この巻にて青大と柚希は、御島明日香も含む広島・東京両組の主要キャラクタたちとあっさりと和解してしまったことで、明日香編での大きなうねりが全く意味の無い物にしてしまった。
ストーリーの崩壊と言うよりも、主人公やヒロイン以外、せっかく積み上げてきたもの、奥行きの出た部分を無駄にしてしまうという、悪い慣例だ。
終わるべきものを終わらせない、惰性で話を続ける作品は例外なくこういうスタイルに陥る。

個別のキャラクタとして見た場合は筆致も含めて星評価は4~5。
しかし、ストーリーとしては星1~2程度になった。せめて晩節を汚さないで欲しい。

都会のお色気に奔った、田舎情緒の純愛物語

第165話から第174話+アルファの内容なので、個別のストーリーについては、鷹岑家文書の記事を参照にされたい。
第18集を手に入れようと本屋に行ったところ、平積みにされていた限定版は午後の時点で5冊ほどあったが、本棚には、17集の限定版もあった。売れているのかいないのかは全くわからない。
鷹岑は当然ながら通常版の方を手にした。17集の限定版断念の理由は、当文書の考察記事を参照されたい。

第18集の感想・・・と言っても取りわけないのだが、個別の考察記事でも書いているように、この巻で、あれほど大波瀾を巻き起こした御島明日香編で絶交・ 転居までせざるを得なかった青大と、明日香を筆頭とする東京組・広島組との全面和解が描かれていることには、非常に勿体なく、キャラクタの存在価値を完全 に無に帰するものだなあと嘆息の連続だ。

振り返れば、連載当初・単行本一桁台は、広島の田舎町のノスタルジックな情緒を背景にして主人公やヒロインたちの心の動きも加味してうまく溶け込んだ「ラブコメ」であったが、東京編が変質の契機になったんだなあと言う、今更ながらの印象である。
加賀月・枝葉懍、保科美友と登場する女性キャラは皆下着姿を晒す色気路線に奔り、終結した物語をいつまでも終わらさず、ただ長く引き延ばすための材料にされている。
当初、君町が持っていたそうしたノスタルジックな田舎の原風景の中に繰り広げられた清冽なラブコメが、精気を失ったあげくに女性キャラがさながら娼婦のように肌を晒すだけで読者の歓心を買う。
ただただ、非常に勿体ない。

OADは観ないが、本誌第28号の瀬尾氏のコメントのように、「ラストがエロい」という、エロさがメインの作品であるならば、18禁アニメにでもすれば良い。そうなったら、鷹岑は買っても良い。君町本来のコンセプトのないアニメに、見いだす意義はあまり感じないのだ。