主人公とヒロイン、交際関係発展前夜の騒動

ヒロインの心壁、コータ逾越える時

カウントラブル・第5集◇カウントラブル 第5集
評価★★★★★

第21話~第25話を収録。
時系列で行くならば秋期の学園祭が舞台の巻。コータの至誠、天に通ずまであと一歩というストーリー。
今巻で特徴なのが、キャラクタの設定がピンポイントで卓越しているというところにある。
特に前々集で騒動を起こしたサブヒロイン・朝霞ちとせがいわゆる「百合キャラ」として再登場し、コータを廻るヒロインの一人に懸想するなど、きちんとキャラクタ救済を忘れないという姿勢が良い。
肝心の主人公松代コータと、メインヒロイン・吉沢あきのだが、こちらもよりよい進展が図られることになる。
主人公の特権を活かしたコータの熱いアプローチの連続に逾、あきのも絆されメーコ越えをコータにせがむなど、読者の琴線に触れる言動に事欠かない。
それでも、コータの想いに応える勇気を振り出せない姿勢は、正道ラブコメならではのものである。

(2012年8月10日 Amazon.co.jpカスタマレビューより)

「僕は、吉沢さんが大好きだ―!」

松代コータは実に好い男である。
この集において彼は長年の想い人(時系列で行けば長くは無いが)である吉沢あきのに遂に告白をするまでに至るわけだが、彼が世界中に聞かれても構わないから、大きな声で叫びたい。
僕は吉沢さんが大好きだ。
実にダサくて、誠に恥ずかしい。全く飾り気の無い告白の言葉だろう。
だが、それが何よりにも勝る、最強の告白文句なのである。
人を好きになるロジックというのは太古より不変のものであり、コータがあきのを好きになったのは、入学式で見かけた、その凜然とした姿に一目惚れした、と言うものだ。
切っ掛けはシンプルだが、そう言ったものである。根拠がある。人が好きになる、惹かれ合うのには核心があるからそうなのである。
あきのは結果的にこの巻では三度、コータを振ることになるのだが、理由は理由にならないもの。そこにコータを慕うメーコをも巻き込んで一悶着だ。ラブコメらしい、あきのには負けたくないメーコの姿がそこにある。
何度読んでも、何度触れてもラブコメというのは主人公の役得感が半端ない。
仮に、鷹岑が今コータの立場にあったら絶対にどちらかを選ぶなんて事は出来ないだろう。もしかすれば、楽な方であるメーコに傾くだろう。
だからこそ、あきのをひたすらに想い、声を大にするコータの姿勢が好い男に映るのかも知れない。着実に、確実にコータはあきのの心の壁を越えてゆくのである。