ハッピープロジェクトの後継、週刊誌昇格の話題作
週刊連載における構成の拙速さとコンセプトの維持

月刊誌からの昇格の長短所

「我妻さんは俺のヨメ」は月刊誌マガジンスペシャルから移籍されたラブコメと言う事で、失速してしまった落合ヒロカズ氏のハッピープロジェクトの後継の色彩が強いファンタジーである。
既刊単行本は第2集に及んでいるが、月刊連載を加味すると8~10話程度の収録と云うこともあり、週刊連載版では実質、リメイク的な出発として見てゆきたい作品である。

鷹岑はマガスペを読んでいないので「我妻さん」自体をほとんど知らないのだが、とにかく一見して思った印象は、メインヒロインの我妻亜衣という少女が、恋愛SLG「アマガミ」のヒロインの一人・桜井梨穂子に酷似しているという印象が強い。我妻 亜衣(メインヒロイン)
桜井 梨穂子(アマガミ)まあ、キャラクタ設定としては全く違う環境に置かれているのだろうが、アマガミを齧ったことのある身とすれば、我妻亜衣のイメージCVは新谷良子君で行っているという心情もお察し頂きたいところである。

我妻さんのレビューを続けられそうならば、キャラクタ考察などはまた追々とやるつもりなので初回である今回は深く掘るようなことはしない。

■我妻さんのコンセプト

新連載である第一回は、物語全ての基礎であり、支持基盤を形成し、世界観を提起するという、最初で最後の重要な回である。これで期待を大きく打ち上げて後は鳴かず飛ばずの尻すぼみとなるか、徐々に期待を膨らませてゆくかの峻別となる。
月刊誌は一話が一般的に30~40ページ程度あるので作者としては確かに大変だが、ストーリーの構成としてはより緻密に深く掘り下げた作品を作ることが出来る。
週刊誌連載の場合は20ページ前後を枠にしたネームとなるので月刊誌と比べればストーリー的に拙速となるのは避けられない事実である。
これまで多くの主要作品が、月刊誌と週刊誌の移籍を経てきたのだが、やはり、畑が合う作品というのはあると考える。週刊誌で映えるもの、月刊誌でより良く なったもの。作者の考え方や、作品の性質によってその色合いが微妙に違うのだろうが、その作品のファンにとっては週刊・月刊の差違というのは人一倍感じる ものだろうと考える。

我妻さんのコンセプトは、高校2年の主人公・青島等が、時々起こる10年後へのタイムスリップ時にはメインヒロイン・我妻亜衣を妻にしているという確固た る事実があり、元に戻ると、その彼女とは言葉すらまともに交わしていることがないどころか、女の子と親しくなることすら無縁の、アマガミで喩えるならば 「ソエン」状態からの出発と言う事になる。

 ●好きなタイミングでのタイムスリップが出来ない、行けるのは10年後の未来限定。
 ●我妻さんと結婚するという未来は、ちょっとしたことで変わってしまう。
 ●現在、青島と我妻さんは挨拶も微妙な多田のクラスメイト

このコンセプトを基軸にしたコメディが展開されるのだろうから、今後の展開はそれをしっかりと見据えてゆくことが重要である。

奥タンだモン♡(青島等)

変態紳士・橘純一と、桜井梨穂子の幼なじみ夫婦を少し砕けた感じのイメージを得たのだが、主人公・青島等、小松正男、伊東志郎と言う名前の通り、植木等・ 小松政夫・伊東四郎という昭和の代表的な喜劇俳優をモチーフとしていることから、この作品の主人公達は基本的にギャグマンガ色の強いものであると言う事が 見て取れる。
ラブコメディとギャグ要素の掛け合いは良くあるが、タイムスリップというファンタジー色の要素もある事から、絶妙なバランスを得なければ、シビアな目にさらされる可能性もある。
もう少し、様子を見てみる必要性があるだろう。

細田的な(小松正男)

一発目で笑ってしまった呟き。主人公達が完全にギャグ要因である事を確証した場面である。

夢じゃなかったっ!(青島等)

タイムスリップの未来は本物であると言うことの根拠付けとして存在する。これで思い起こすのは、ドラえもんで、のび太の未来の花嫁が、源静香じゃなくて剛田ジャイ子であるという未来の変化が、些細な現代の事象で起こりうるというものが代表的だ。
のび太はジャイ子の熱烈さを忌み嫌っているが、「我妻さん」は一応、ラブコメという立ち位置にある以上、主人公に絡む複数の美少女達の登場が予見される。 タイムスリップする度に、花嫁が我妻さんでないこともあって、ただジャイ子のように不細工ではないから迷うヘタレの主人公、ともなるのだろうか。

夜中に書く恋文(蔵石ユウ)

確かに。考察や小説を書くときは、昼よりも夜中の方がすらすらと書けるものです。身の破滅というのは極論ですけど、振り返って読めば、随分とギラギラした文章になっているなあと思うことが多いですね。

恋のジャンヌ・ダルク(青島版恋文)亜衣ラブユー

嘲笑に値されているのだが、目下こういう文言を書ける人も少なくなっているなあという印象が強い。鷹岑も拙文を書く人間だが、こういうフレーズはなかなか出てこなくなった。
そういうことからしても逆の意味でインパクトが強い文言になっている。

あ さよなら(我妻亜衣)

ソエン状態から始まる桜井梨穂子我妻亜衣とのファンタスティックラブコメディか。ゼロからのスタートと言う事でギャグ要素満載のポジティブな展開が期待出来ることになるだろう。第一話で提示された多くの基本原則を本にこの作品の行く末を見守る事が出来れば良いなあとは思う。