青大に心寄せるヒロイン格に挑む、無謀なタラシ男
自己解決する七海の危機、心 優しき青大、捨て置けず
~青大指向のヒロイン格、他の男寄せ付けず

▼学園祭。水本部長からキャンプ料理のブースを任され腐る青大。相変わらず勘違いで全くすれ違う夏越と青大。一方、手作り菓子ブースの七海の方は客足が さっぱり。青大と七海の元へ藤河と名乗る男が現れる。七海に告白をしてきた相手だと言い返事はまだだという。返事は早いほうがいいと言う青大に、七海は明 日しようと返す。七海が帰った後、友人の高波奈央に呼び止められた青大は、藤河が女たらしである事を聞かされる。

七海の危機は寒心に及ばず、自己解決する

休載明けの今回は元メインヒロイン左翼である神咲七海にスポットが当たり、彼女に告白したという「藤河」という新キャラとの掛け合いが目下注目するとされ ている。
女たらしという噂の藤河の毒牙に掛かるか否や、いざ征け我らが桐島青大! となりそうに思えるのだが、七海に差し迫る危機は実に詮無きこと。読者が寒心に 堪えない必要は全くないと考える。
鷹岑がそう言う根拠は、当考察やレビューでも指摘しているように、この物語の全女性キャラクタが、どういった立位置で青大に対しているかと言うことであ る。
夏越美奈▼夏越美奈

全方位から好意を寄せられている良例である夏越美奈は、数十話越しに再登場した時も青大への好意が冷めやらずに坂本を始めとする男性陣からのアプローチを拒み続けているのである。
すなわち、神咲七海にしろ前回の御島明日香なども含めて皆、桐島青大に一定の好意を寄せているので、排他的な傾向がある。
ゆえに、今回の七海も結論から言えば藤河との交際関係に発展することは可能性としては低い。よしんば発展に至ったとしても、青大指向の心情から性的関係に至ることは殆ど無いと考えて良いだろう。
新キャラの七海の友人・高波が早々に藤河の女たらしを密告した訳だが、青大が救援の手を伸ばす暇もなく七海自身が自分で収束を図ることになるだろう。

七海の自己責任

神咲七海に限ったことではないが、基本的に恋愛というのは自らが判断し交際の可否、継続、断念をするものであるから、その決断をどんな理由があるにしろ相 手に責任を負わせるのは鷹岑は間違っていると思っている。勿論、浮気や借金、DVと言った精神的・肉体的な傷害を受けた場合等は別。藤河
今回の七海は、かつて枝葉懍から指摘されてきた、キープ君として相手を維持し続けているという側面が活かされた展開となっているが、藤河がたとえどのよう な性格であったとしても、七海自身が彼と交際するのもしないのも、またそれによって起こりうるいかなる事案に対しても、彼女自身の自己責任であり、恋人を 持つ桐島青大が干渉する意味は殆ど無い。
流石景氏のGEや、その他一般的なラブコメならば、相関関係の幅が広いので、こういう場面での主人公の行動は、得てして意味を持つものであるのだが、君の いる町の場合は、繰り返すが枝葉柚希を筆頭に、全ての女性キャラクタが画一的に青大に好意を懐いているという極めて異色の関係なので、青大が行こうが行く まいが、七海が藤河とどうなるということは殆ど無い。
御島明日香でさえ青大への恋愛的な意味での好意を維持し続けているのに、七海にはそれがない。と言うことはないのである。

“いつまでも処女だなんて”(七海)
~突拍子もない残心

神咲七海すべての登場人物(特に女性)がまるで北朝鮮の「愛する将軍様」よろしく青大に対して好意を寄せている現象というのは、青大をゼロとしてプラスマイナスの較差が殆ど無く、浅薄(うすっぺら)なものであることを鷹岑は指摘している。
前回の御島明日香との急接近を呈したネタも、本質的にはその相手が御島明日香である必要性がなく、今回の神咲七海と入れ替えてみたとしても、全く違和感がない。
鷹岑がラブコメとしての君町は既に終り、後は既存キャラのロンダリングと評しているのはこのことを指摘しているのであり、「この場面ではこのキャラクタでなければならない」という確信性が全くないのが、後半の君のいる町における最大の迷走なのである。
今回、七海が久しぶりにゲストキャラとして登場させたのは良いのだが、藤河との交際の是非を青大に諮り、「いつまでも処女でいるなんて恥ずかしい」など と、よもや現実的に女性が恋人でも何でも無い男性に対して発するには、とても考えにくい言葉を述べるなど、瀬尾氏の恋愛観に対して、甚だ違和感を覚える。
「七海はそんなことを言うキャラクタだったのか」「七海の口から処女なんて・・・」と思われる読者や七海ファンも少なからずいるだろうが、一般的に処女と いう単語は、いわゆる「女子会」ならばともかく、女性が男性との会話で持ち出すには相当生々しさを感じさせるものだと、鷹岑は思う。
神咲七海のイメージチェンジを瀬尾氏が発信しているのだとするならば、方法としては実にえげつないし、今更七海をどうこうするという時宜でもない。

すぐに飽きて捨てちゃうような人よ‥‥(高波)
~SD・伊藤誠の足下に及ばず

新キャラとして登場した高波奈央が危惧した藤河の素行だが、知らぬが花とはまさにこの事であろう。
これまでの桐島青大の行動や、求心力の大きさを考慮してみれば、藤河などと言う単発モブキャラ紛いの小男が女たらしとは甚だ可笑しくへそでお茶を沸かしてしまうだろう。
藤河が如何に女たらしで、肉体関係を持った後に捨てるようなリア充の一端だとしても、SDの伊藤誠や、藤井冬弥、伊波健らの足下にも及ばず、本気を出した青大にさえ一蹴される程度である。

いずれにしろ、物語の展開がどうなろうと、今回久しぶりに登場した神咲七海が、「今もなお青大に想いを寄せている」と言うことを再確認する程度で収斂するのであろう。故に、歯牙にもかけないネタである。