相も変わらずの放置プレイキャラ、頭打ちの浮揚策
青大指向の百合キャラ設定、徒事に終わる
~何の採算も無き、瀬尾流の典型設定

▼青大が家に帰ってくると、高波奈央が柚希と急接近の場面を目撃してしまう。青大の勘違いだったが、高波に対する警戒心を人一倍強くする青大。後日、青大 に声を掛けてくる懍を見て高波が気色張る。可愛い女の子なら誰でも良いのかと、確信した青大だった。

事前のプロセスを一切無視した好感度

「君のいる町」にとっては高波奈央の方が新キャラとしての重要度が高かったようである。
ところが、物語としてはこの際、高波だろうが天谷だろうが、強いてあげれば藤河昭人であろうが誰でも基本的には変わりがない。
高波奈央は、今流行とされている“百合キャラ”を当て嵌めた存在だとされているのだが、今更、この君のいる町にそのような設定のキャラクタを出したところ で、何ら意味が無いと言うことはおそらく多くの読者が感じていることではないだろうか。

鷹岑としては、折角タレントの真野恵理菜君をモチーフした「水本真菜」を活かす気があるならば、高波の存在ではなく、真菜を柚希の対抗馬として中心に据 え、夢を目指す青大と柚希の間の強力な存在感を発揮させた方が、よほど良いと考えている訳である。
高波奈央▼高波 奈央

百合傾向というメンタル設定はともかくとして、主人公と知り合って2日目で速攻デート、時系列にもよるが短期間で同棲カップルの部屋に来て傍若無人に振る 舞うなど、瀬尾流の新キャラというのは実に勝手次第である。
高波奈央は瀬尾流人物取捨選択の典型的なパターンである訳だが、このキャラクタに限らず、新キャラは何故か当初から主人公に対して好感度が高い傾向にあ る。
出会ったその日に躊躇いもなくタメ口を聞き、食事を共にし、家にまで行く。それならばデートなど朝飯前であることに間違いが無い。
高波奈央の存在意義等については、後で考察において述べることにして、そう言った短絡的、事前のプロセスが全くない主人公への好意と、友好度の高さという のは、本来違和感と言うものを感じる訳だが、君のいる町においては疾うにそれを通り越して、また無駄なキャラを出しロンダリングしようとしているなあとい うイメージしか無いのである。

ここに来て、わざわざ百合キャラと絡める意味

鷹岑は以前から言っているのだが、新しいキャラを出したり、そのキャラクタが「百合」であろうと「アッー!」であろうと全然構わないし、それを否定するよ うなことは決してしない。
ただ、そのキャラクタが果たしてストーリー上必要なものであり、意味がある存在なのかどうか、と言うことを最大限の配慮をもって指摘しているだけに過ぎな いのである。
瀬尾氏が如何なる思惑があって新キャラを次々に投入しても、それらが物語の中で何らかの形であれ活かされるというのであるならば、大歓迎だ。

振り回される青大さて、そういう事を前提にした場合、事ここに至って、柚希に懸想をする高波奈央を出したことによって、何か大きな動 きがあるのだろうか。過去の考察で何度もキャラクタの存在意義については繰り返しているので割愛するが、鷹岑はこれまでの慣例に倣うキャラクタのようにし か思えない。

●第21集カスタマレビューの草案に絡んで

これは単行本第21集のカスタマレビューの草案にも通じた事で言うのだが、そもそも第200話における青大と柚希の結実が遅きに失したこと、また折角の画 期的なシーンが、200話目に描写するという技術的な手法に偏ったために、前後の構成が、あまり意味が無く筋の通らないものになってしまったのである。
高波奈央が百合であろうと痴女であろうとバイセクシュアルであろうと青大と柚希の関係に罅を入れる衝撃には決してならない上に、本来君町の総合的なキャラ クタ設定や世界観には、そのキャラクタはそぐわない。キャラクタの外見や性格は幾らでも良いものを描くことが出来ようが、合わないキャラクタを作っても、 使いこなせず放置されるだろう。
それでも、これまでの既成キャラクタに、青大らと距離を置く存在があれば、直接的な繋がりが無い高波奈央というキャラクタも、活きる余地はあったのであ る。
物語の中で高波奈央が七海から柚希、懍と目移りをしたとしても、青大への“好意”は今までの既成キャラと同じなので、結局面白くもないし、終着点が垣間見 えてしまうのである。

この疎外感‥‥(青大)~そうは思えぬ会話

疎外感女子同士の会話に男が入れなくて疎外感を覚えると言うことは、実際問題としてあまり考えにくいと思うのだが、いか がなものであろうか。
柚希がやっかみを覚えたのは、青大が異性である真菜との会話が嫌だったという事であり、これがもしも逆の立場だったら、鷹岑でも心底穏やかにはならないだ ろうと考える。
青大は、高波奈央の言動については半信半疑の立ち位置であるうえに、柚希が同性愛傾向を持つという事は全く脳裏に無いので、彼がこの場面で懐いたという疎 外感は、柚希が水本真菜との弾んだ会話を間近で耳にした時の疎外感とは完全に異質である。
まあ、それでも自らが感じた疎外感というものを、柚希も感じていたというのが完全な見縊りだったとしても、それで柚希との気持ちがまた一段と強くなったと いうのであるならば、怪我の功名なのかも知れない。

桐島くんはわかってくれると思ってたのに‥‥(高波奈央)
~青大は理解するも、全体として徒事に終始

女が女を‥この物語では殆どあり得ない話だが、高波奈央はまだ青大を理解し切れていない。
彼は恋愛の弥勒仏であり、この世界の全ての女性から一定の好意を向けられる極めて異色の主人公なのだ。
「女性が、女性を好きになるのはおかしいことなのか」という考え方自体が鷹岑は時代としては遅れているような気がするのだが、それはともかくとして、青大 は弥勒仏の化身よろしくこうしたマイノリティに対しても非常に寛容で、分け隔てなく接するのである。
つまりは高波奈央の良き理解者にもなり得るし、それによって関係発展の要素も多分にしてある。
青大を前にして「青大ならばわかってくれるって思っていたのに・・・」などと思う必要は無い、杞憂そのものである。
懍受難▶枝葉懍受難

青大への強い思慕をひけらかした後、酔余の保科美友に続いて同性からの色事に事欠かない枝葉懍の落し所としては非常に微妙なところであるが、ある意味少年誌での限界を示しているとでも言えよう。
懍はそのキャラクタ性を発揮できずに、このまま封殺されてしまうのだろうか。