日本全国津々浦々、桐島青大の女人天国
地域色が殆ど出ないハレム天国、舞台を移す意味も知らず
~やっていることはワンパターン、語るも愚劣な退化ラブコメもどき

総合評価(-10)

▼新キャラ・安達実咲とその友人の事について語られる回。例によって青大の部屋での泥酔パーティー。エロ展開の中で、何故か御島明日香が来訪するという、もう支離滅裂でどう解説して良いか分からない、乱麻な辻褄。

早速出ました、無尽蔵な資金捻出

アホガールを手掛けるヒロユキ氏は、そのツイッターにおいて「学生の身分で旅行に行く為の資金はどこから捻出しているのか」という、設定質問について意識 をした返答を成している。やはり、読者から指摘された疑問や謎についてきちんと意識し、辻褄を合わせようという努力を見せる姿勢が問われるのだ。
確かに、アルバイト等もしていない、或いは学生アルバイトの風情で高校生が一丁前に旅行を気取るにはそれなりの説得力が必要になる。
「そこは漫画の世界だから」などという言い逃れは通用しないだろう。

東京~高知ちなみに、今回の話で枝葉柚希がいとも簡単に今週末、青大に会いにゆく。と語った場面だが、さて東京~高知間の交通費を考えてみよう。
高速バスや自家用車という手段は考えにくい。新幹線という手段もないだろう。

【新幹線などの電車を利用した場合】※出典…Yahoo!知恵袋
http://chiebukuro.travel.yahoo.co.jp/detail/1153658306.html?p=%E5%BE%80%E5%BE%A9%E5%89%B2%E5%BC%95%E4%B9%97%E8%BB%8A%E5%88%B8

【航空手段を利用した場合】※出典…トラベルジェーピー

http://www.travel.co.jp/air/pricelist/KANTO/HND_KCZ_0_1.html

見ての通り、一応は電車を利用するよりは飛行機を利用した方が、時間も早く安いことは確かなようであるのだが、最低でも2万5千円程度はかかる料金を「週末に会いたい から」と、前後の脈絡も考えずにポンと捻出出来るこの漫画の資金源の無尽蔵ぶりには、鷹岑はずっと以前から実に感心して止まないのである。

○事もなげに往来していた、東京~広島間

君のいる町の単行本を追って読んで頂ければ直ぐに分かるのだが、この漫画のキャラクタ達は広島編時代から主人公・青大のいる場所と遠く離れた地域が、まるで隣町であるかの如くキャラクタが往来する。
現実的に考えれば片道の交通費ですら馬鹿にならない、学生の身分でその資金はどこから出ているのか、などという疑問が真っ先に浮かぶのだが、瀬尾流の作品 においては、そうした資金面に触れることすらナンセンスなのか、お金の問題は想像に任せる。などと言った非常にアバウトな面が目立つ。
柚希を案じて広島から東京に何度も往復した桐島青大・高校生。名古屋から連れ戻す時には思い出したかのように交通費を出してはみたものの、あまり意味はなかったのか、保科美友という詮無きキャラクタに食い尽くされた。

こうした鷹岑の疑問は、果たして細かいことなのか、詮無き疑問なのであろうか。

遠距離恋愛のもどかしさというのは、「会いたいのになかなか会えない」という点にある。その本質はやはり会いたいんだが、そこに手っ取り早く行くための金がないからであって、お金が無尽蔵にあれば遠距離恋愛なんてのは屁でもなかろう。シュミレートも意味ない
つまり、この漫画においては、青大のいる場所が、高知だろうが北京だろうがブダペストだろうがジュノーだろうが、「週末予定ないから会いに行って良い?」「オッケー!」で済まされるということは、遠距離恋愛の意味すらないと言う事になる。
お金の問題は「漫画だから・・・」で済ますような問題ではない。こんな事がまかり通るのならば、そもそも就職しているという事の意味すらない。
まあ、瀬尾流は以前からこうしたお金の問題については無尽蔵で、景気も悪くなくオールバブルで、青柚を始めとした登場キャラクタの預金通帳には残高「∞」となっているのだ、と鷹岑は指摘した。
彼はそうした素朴な疑問について、全く意にも介していないようだが、漫画として非常に大事な世界観の崩壊が、こういうところにあると言うことを、もう少しプロの漫画家なら自覚した方が良いと思うのだ。
だから、この作品のキャラクタ達が言う「苦しみや悩み」というのが、非常に白々しく思えるのである。

柚希に会えるからと、避妊具を買い盛る青大だが、瀬尾氏が「思いつきでやっている」という考えを良く示した場面だ。
普通の構成ならば、社員寮に住み、新入社員が恋人を呼び寄せて情事に没頭することは憚れるだろうから、逢瀬は市内近郊のラブホテルだろう。ラブホテルに使うお金はいくら掛かるか、食事代はいくら掛かるか。せっかく週末初めて遊びに来るのだからドライブにでも行こうか。
全てにお金が掛かる。新入社員で初月給も貰ったかどうかも分からないようなぺいぺいにどれ位のことが出来るのか。避妊具を買って鼻息を荒くする場面ひとつ描けばそれで良いのだろうか。鷹岑はどうもそうは思えない。
瀬尾氏はアイテムひとつを出せば、恋愛やその土地を思わせることが出来ると思っているようだが、全く使い方を間違っている。と言うよりも、それこそ「思いつき」でやっているから、矛盾や辻褄の合わないことばかりが雪達磨式になってゆくのである。

彼氏がいるのに青大部屋でパンツ丸出しに泥酔する

安達実咲(下の名前は今週号で初出)を高知編という形式上、鳴り物入りで登場させたわけであるが、彼女の設定の本質はこれまでの既存サブキャラと大差はない。
保科美友や天城紫歩、天谷栞らが再退場したから、その穴埋め程度で気持ち投入したのである。彼氏がいるのに

付き合って4年の遠距離恋愛の彼氏がいる。という設定の割には、泥酔してミニスカートを履いた格好で青大の部屋に押し掛けてパンツ丸出しで爆睡。仕事に打 ち込む姿勢とか、その性格とかはともかくとして、物語としての立ち位置は、もはや食傷も過ぎて胃もたれ嘔吐しかける存在であって、主人公役得以前に、彼氏 がいるという設定そのものが意味のないものであることがよく分かる。
「涼風」で似たようなシチュエーションを引っ張ってきたデジャブを演出しているようだが、「ハイツ旭湯」で一度再現しているので全く蛇足である。

淫乱上戸・山崎

桐島青大に「ダメな人」と呼ばれてしまっては身も蓋もないが、とにもかくにも瀬尾ワールドは行くところ全てお色気サービスシーンがなければ気が済まない。
しかし残念な話、如何に瀬尾が頑張っても、成年漫画家にはそのエロティシズムは及ばない。
鷹岑もストーリー性という観点に立って様々な成年漫画を読んでみているのだが、前から評しているように瀬尾氏の「エロ」は、新人泡沫のエロ漫画家の読切作品にも及ばない。
つまり、ストーリーがスカスカで、エロも中途半端なので全く記憶に残らないのである。
淫乱上戸
ある名無しの感想で、「現実にあり得ないし、青大って一体何なの? これがラブコメなのか。不倫物語じゃないのか」と言うのがあったのだが、端的に言えば実に的を射た疑問と批判であろう。
漫画だからある程度現実から逸脱する描写があって構わないのだが、瀬尾氏の場合はなまじ取材力が秀逸で劇中のキャラクタの台詞が、生々しいほど現実的な事 もありながら、殆どが崩壊したストーリー。全ての登場人物に好かれ、距離を置くキャラクタが一人もいない主人公。ラブコメと未だ銘打ちながら、ラブコメら しい展開のかけらもなく、雰囲気に流される。

SDの伊藤誠にもなりきれず、全てが生煮え。そして何故か、予想通りの御島明日香登場で、いろいろな意味で辻褄合わせもない。

今、連載が終了すれば鷹岑も含めて清清とするので、それも悔しいのだろう。汚名を刻みながらさらなる長期連載を願う。