あんたなんか嫌い!→それでもお前を放っておけないんじゃ→あなたが好きかもしれない
青大を嫌 い続けること敵わず、長門未沙も青大好きクラスタに感化さる
君のいる町・第25集君のいる町 第25集

総合評価★★(-4) / 筆致評価★★★★★

第233話~第242話、並びに番外編「トリック オア トリート」が収録。
君のいる町も第25集を超え、30集台を窺う勢いを依然、維持し続けている、週マガ切っての恋愛枠作品。

青大が柚希にプロポーズするなど蜜月時代も爛熟期に達し、元カノである御島明日香の影もチラホラと
しながら、順風満帆な同棲ライフを送っている様子が窺える。
ストーリーはそして就職活動編に移行し、新たしいキャラクタとして「長門未沙」が登場、青大に対して
一方的に敵愾心を燃やし、何かにつけて突っかかってきた。
今集は、主に長門未沙を中心にした就活にスポットが当たり、本編関連では由良夫妻に男児誕生という大
きな動きがあったと言うことである。

さて私がカスタマレビューをする際に当初から同じ目線として置いている「ラブコメディ」としては、もはや言うまでもなくほとんどその機能を失っている。 遣っ付け仕事的に柚希といちゃつく様子や、これ見よがしに元カノを出してみたところで、今更大きな激動を起こすような要素も、作者側もそうした気概はな い。
長門未沙というキャラクタも、ラブコメとして必要な人物では全くなく、全体として果たして意味のある就職活動編というターンの必要性が問われた時に、それ 自体あまり重要な意味を感じないのである。
そして、これも悪しきパターンだが、当初は青大を嫌っていた彼女も結局は他の女性キャラクタと同じ、青大に想いを寄せるようになり、叶わぬ恋にもどかしい とばかりにフェイドアウトしてゆくパターン。
君のいる町のコンセプトである青大と柚希の恋愛譚でない別のテーマならば、タイトル自体を一新すれば良いのではないか。このような駄駄羅遊び的な惰性展開 を続けて、いつまでも同じ青大と柚希のラブコメと位置づけている以上、ファンとしては身を切る思いで厳しい評価をし続けなければならないのが悔しいのであ る。
ただ、メインストーリーに関与した由良夫妻に子供が誕生したという御祝儀相場を込めて、今集は星評価は2としました。早晩なる連載終了をもって、これ以 上、ラブコメとして晩節を汚さないようにして欲しい。
ただ、就活に纏わる一連のキャラクタの台詞などを繙けば、瀬尾氏の取材能力の緻密さや、それを基にしたネーム構成自体は高く評価する。

名言も、詮無きものとする弥勒 昨日の敵に、気がつけば恋

この25集を改めて流し読みして、ハテ。冷静な視点で考えてみれば、この第25集のメインストーリーは、一個の独立した読み切り、単発の単行本として集中連載していれば充分、機能していたんじゃね? と思った鷹岑が通ります。
そうなんです。これは「青大と柚希のラブコメ」というコンセプトを以てなす「君のいる町」というタイトルそのものが最大のネックになっているのではないかと考えられますが、どう言ったものでしょうね。

まあ、そういう考え方で読んでしまえば、君のいる町としての感想からは大きく逸脱してしまいますが、敢えてその君のいる町の感想ではなく、桐島青大というキャラクタと、長門未沙という女の子の就職戦線ストーリーと捉えてみましょうかね。

出会いは陳腐、就活会場でぶつかって、初登場早々、パンチラのメガネ美人。柳に風と思ひけり、とばかりの桐島青大の飄々ぶりを嫌う長門。だが、自然体の青 大を好意的に受け止めてゆく、一流店の名シェフなど、ただ気張るだけの長門は益々苛立つ。そして、就職試験のためならば身をも投げ出すという悲壮の決意を 持って臨むも、颯然と現れた青大に、「やっぱりダメじゃ、こーゆーのは!」と危険な場面から攫いだしてくれる。自らの行動に慄然となった長門。済ってくれ た青大に余計なことはするなと叫ぶものの、救ってくれた事への感謝の念が強まり、そしてそれはいつしか、青大への恋心だと気がつく。

初めは嫌な気離りに 思い一途な闇夜の灯り 明日を悔やみし自棄の汀を 救い出したる桐島青大

主人公こそ、桐島青大としているが、なになに瀬尾流の主人公なのだから秋月大和でも澤崎真吾でも緒方ナツキでもいいのである。長門未沙を人事部エロオヤジのセクハラ魔手から颯爽と救ってくれるヒーローならば良いのだ。
どうだろう。実は就職活動編という名の、長門未沙をヒロインにした独立した物語が出来てしまっている。これならば、鷹岑も星評価は4~5は与えるに値する。
タイトルはそうだな。「就活ナンチャラ!」みたいな感じで(笑)

まあそれはまあ、ともかくとして。

「面接官が興味を示すのも、内定を貰うのも、みんなただ三年間遊びほうけてきたあなたたちの方じゃないか」と言ったような名言が後半、長門未沙の口から発せられた。
桐島青大を恨むのも筋違い、寝食遊興を忘れてあたら青春の4年間を棒に振ってきた長門が発することに意味がある。瀬尾流の真骨頂だ。
だが、翌週には大手新聞社に無事内定。昨日の名言も詮無きものとばかりに、何と泣きながら噛みついた怨敵に敵わぬ愛の告白とくらぁ! 当然、青大は聞こえなかったとこれまたお約束。
既に届かぬ高嶺の花ならぬ、高嶺の青い大空か。長門は立派な新聞記者になると本心を決意で隠してフェイドアウト。いやあここだけ見れば、前向きながらも切ないですね。
どうせ続くはいつまでか。偕老同穴よろしくどうせなら老いさらばえるまで君町は続く勢いながら、青大の就職先に異動してきた、朝日川新聞・高知支社。となるかもね。
ま、長門未沙はかわいい系だから、もう何でもいいわ。
そんなこんなで、彼女も同じ、最初は青大が嫌い。でもいつの間にか青大のことが好きになっていた。所詮、君町女性クラスタの渦からは逃れられぬ運命なのさ。だんだん。