温故知新・タカミネコウのTOD的こころ

「そらのおとしもの」~大団円に寄せて。ラスボスなき桜井智樹日常譚

タカミネコウのTOD的こころ。今日は「普通が一番!今日も平和だご飯が美味い」そらのおとしもの。について考える。
講演:鷹岑 昊。原作:水無月すう(そらのおとしもの)。お囃子:山本直純
(以下敬称略)

出会いは書店のオビ・アニメ化に釣られて

2005年にデジタルハイビジョンテレビを我が家で初めて買った直後って、BSデジタルやら、110ーCSなど、全く体験してこなかったデジタル技術に唖 然呆然としてですね、そりゃああれやこれやとサービスを弄ってみるわ、何だかんだと有頂天になってましてね。あたしもBSやらで観たこともない都会の深夜 アニメとやらを鬼のように観まくっていたんです。
そんな名残っちゅうか、スカパー!にも加入していましてね。勿論、あたし個人としてなんですが、チャンネルはAT-Xとアニマックス。そしてHDDレコー ダーと鬼のように録りまくっては観まくる・・・なんてそうは問屋が卸さないんですな。何せいざ録り溜めてみると数が多すぎて全部が全部観られたもんじゃあ ない。
そこへ、2007年にBS11が開局になったでしょう? アニヲタ垂涎のラインナップにあたしもそれはリモコンボタン何度ヘタレさせたことかわかったもんじゃあない。あたしも言ってましたよ、能登かわいいよ能登。

そんなアニヲタ全盛期のあたしと同時に、お向かいの佐藤さん家の大輔もやっぱり都会のアニメが観られることに大喜びでしてね、それに感化されてか、ようけなけなしの小遣いを気に入ったアニメの原作本コミックスを大人買いしとったなあ。
そらのおとしものは何故か気になるカバーだった。と言う大輔。アキカン!は観ていたけど、そらおとの第一話が妙にはまったんだ!なんて、そんなに面白いのか。
水無月すうの筆致は繊細だけどちゃんと萌えの要素もあって、早見沙織や野水伊織という声優をいよいよ認知できたのものこれだったんだよね、とあるんだが、早見はセキレイもヒロインやってるから成長株なんだなあという話にまでなってねえ。
閑話休題
この作品の主人公・桜井智樹が「今日も普通に、平和に暮らすこと」と言うコンセプトをひけらかしながら、この町はいやはやただでさえ美女・美少女ばかりで 年寄りがいない。こんなんで普通に平和に。なんてありえんだろ。と思うのだがね。結構、鬼のように大人買いしていたコミック本の中でも、そらおとは何だか んだ言って結構、気にはなっていたみたいだす。

ヒロインは誰だろう

主人公の桜井智樹は確かにエッチで見月そはらの殺人チョップや五月田根美香子の暗殺紛いの洗礼を浴びることがギャグパートの醍醐味なんですけどね、彼は結 局終始一貫として泰然自若としていましたよね。何か、天上のシナプス勢力が何かものすごいことを企んでいたとしても、智樹が「そんなことは後で良いからま ずお茶飲めや」のひと言で毒気を抜かれてしまう様はある意味最強でしょう。エンジェロイドを一人でカッカとなって送り込んでも「何やってんの」みたいな呆 れ溜息ひとつで水の泡。結構、智樹ってそんな様々なえっちい行動って、自分の本心じゃあない気がしましたね。演技しているというか、未確認生命体とか何と か、美香子を極悪の権化とかと恐れおののきながら、そはらも含めて皆一様に同じ目線で捉えていて自由主義者みたい。
智樹からすれば、政争も地上支配も宇宙侵略で神経使うよりも、一杯のご飯と美少女の尻を追う方が大事で、そんなもののために他者の自由を妨害されるのが何 よりもバカらしいと考えている。それを使命として生み出されたエンジェロイドに対しても「何やってんの? お前、自由になれよ」とあっさりと言えるんだか ら、こういうナチュラルな主人公というのは、実に恐ろしいよね。

だから、智樹目線でそらおとを見れば、この作品って一応形としてはイカロスがメインヒロインとしてあるんだけど、厳密に言えばヒロインっていないんだよね。
そんなこと言ったらほら怒ったよ大輔。ヒロインのいない漫画なんてあるか! いやいやあたしが言いたいのは、ヒロインって形って言うよりも、桜井智樹の日 常日記を坦坦に綴った物語であって、言うなればイカロスもそはらもニンフもハーピーもカオスも、智樹が綴る日記の一行「今日はあいつと買い物に行って飯を 食った」
何て言う感じの、彼が言う本当の、普通なる日常生活なんだよね。主人公とヒロインが織り成す、波瀾万丈のラブコメディ!
まあ確かにイカロスの降臨から始まった智樹の物語なんだけど、結局彼が本質的に彼女たちを見てきたものって言うのは、普通で平和な日常そのものだったと言える。

終わりよければ、すべてよし

「一発、思い切りぶん殴らせろこのバカちんが!」
最終回でシナプスの王に拳固を喰らわせた智樹も、やっぱり本質では泰然としていたようです。「こんなところでふんぞり返ってないで、お前も地上に一回来てみろや」
何か一人で意気がり、一人で敵対心を燃やし殺そうとしていたのが、ことごとくバカみたいに思えます。地蟲に情けを掛けられるとはな。などと負け惜しみを言 う王に、智樹は「そんなことはしらねえよ」然と、そこはかとなく父性愛のような不思議な暖かさを感じるシーンで、王は負けを認めることになる。まあ、智樹 からすれば勝負なんて言うのも、端からどうでも良い話なのだろう。

智樹が願った、普通で平和な日常が回帰するラストシーンは、そらのおとしもの七年余の終結としてまさに万感去来するハッピーエンドだったと言えるでしょう。
この作品、また水無月すうが訴求した「普通の日常」と「平和」という意味は、端的ながらも非常に広義的なものであり、難しいテーマだったのだが、作者として主人公を通したその一端を示すことが出来たのは良かったと思うのだ。

2000年代に始まり、ヒットしてきた大型連載が続々と終結を迎えてゆく2014年初頭。まあ、そんなわけで、あたしのアニメ熱と共に歩んできたそらおと の終結を知って妙に昔を懐かしく思えて、もう一度アニメを観てみようかな? あ、いや時間が無いか。でもまだまだ余韻は続くらしいから、楽しみにしている のもまた一興と思うこころだー!