硝子の本心を識り、別離の現実を案じる将也
東京への期望、続々と主要キャラの収斂を迎え強調される

~迷いはただ将也の心中にありて物語は万事欠くなき終結へラストスパート

▼硝子の上京への想いに途惑う将也。硝子が気になるなら共に上京すれば良いと言う母。しかし、将也に窘められ思い止まる事を告げる硝子。家庭のことを思え ばこそ将也は更に答えが見出せない。将来の進路を決めてゆく将也周辺。結絃もまた、硝子の上京の想いに応えようと努力を始めていた。そして決意する将也は 硝子の上京を応援すると伝える。そして、自分自身に対さなければならない将也。

未来に蹲踞し続けてきた将也。それぞれのために選ぶ人生の岐路

将也母物語も着陸段階に到り、将硝の周辺が駆け込み収斂というのが顕著である。気に掛かっていた伏線も一定の回収を得た。
かく言う将也の遅疑逡巡は話数調整の色彩も感じさせる。怖い物知らずで駆け抜けてきた小学時代とはすっかりと毛並みが異なり、随分と慎重になった。

聲の形に限らず、以外と大手全国系漫画雑誌に掲載されている地方舞台の作品って、上京というある意味通過儀礼にも等しいことに関して、意外とチープな感覚があるような気がするのは果たして鷹岑だけだろうか。上京への想い
まあ、誰かが言ったから突然浮上した上京話ではある訳だが、やはり夢の行き着く先は大都会。というイクエーションがそこにあるのはむしろ当然のことであるのかも知れない。
仮に将也や硝子のどちらかが東京に行かず、或いはいわゆるUターン就職という夢のプランの実現に到ったとしても、東京に行ったという事実は残るわけで、地 方残留というか、地方土着にそれなりに誇りを持っている人からすれば、東京というフレーズが出てきた瞬間に、作品そのものをノーマライズしてしまうのでは ないだろうか。

まあ、将也は小学生の件以降、未来に踏み出すことを怖れ、他者にバツ印を付け硝子という縁に依存していた事から、彼の〝成長〟という視点からすれば確かな ものが聲の形そのものには具現化されているのだが、そうした昇華の触媒が〝東京〟というのもまたある意味王道で無難なものだなあと言う感想である。

川井みき、収斂す

川井みき〝傍 観者〟の象徴たる川井みきが、真柴智と含みを持たせつつも収斂した。彼女に関しては設定や立場上浅からぬ思いを致す読者もいよう中で想い人たる真柴を追 う、という形での団円。前席の溝端を誣告した件はどうなったのか、という話にも到るが、真柴は受け流したのだろうと思った方が良いだろう。将也瀕死事件を 受けて、登場人物の負の部分、新たに連載が始まった作品の言葉ではないが、それぞれが科してきたカルマを自浄していった。そういうことにしておくとしよ う。

大今良時氏はその終結を定石・王道に囚われる事だけとは思っていない。と言うようなニュアンスをインタビュー記事で曰っているようだが、確かにその通り で、しかしながら普通の漫画と化した聲の形で将硝の影響が好転して川井と真柴を繋ぐ契機になる。と言うのもある意味それで良い。
真柴は川井をけんもほろろに往なすようなことはしないだろう。真柴を追うことによって、川井が改心しきれなかった部分も大人になって気がつき、20年後・30年後にでも、自分が傷つけた人々へ謝る伏線である事が出来れば、それに越したことはないと思うのである。

西宮結絃の写真、優秀賞

優秀賞聲の形の隠れたストーリーテラー・西宮結絃。事実上、西宮家の中核は彼女であったと言っても良かったわけだが、そんな結絃は最後まで姉・硝子と響震し続けたキャラクタであったと言えるだろう。
西宮(正確にはママ宮)が応募したとされる県のフォトセレクション。巨匠・流石景氏の恋愛漫画『GE』の特性ではないが、思いも寄らない内面を示す部分が評価されるかと思って張られた伏線を注視していたのだが、収斂事実は「優秀賞に選ばれた」という事実のみ。
いやはやてっきり鷹岑は動物の死骸の写真ばかり撮っていた結絃が、鳥の形をしたその草地の画に前向きとかなんとか、ポジティヴな想いが込められていたとかなんとかというコメントがあるのかなあとか思っていたのだが、割愛されたようである。
いや、それで良いのです。主人公はあくまで将硝。結絃はストーリーテラー。今はただ、硝子の東京遷居の是非を語る終盤であるべきだと、鷹岑は理解しているつもりです。

将也・結絃の決意

将也・結絃の決意邪 推だが、大今良時氏は自身の投影を結絃に向けているのではないかと時々感じることがある。その理由はこの考察でも散々指摘しているように、物語然とした将 硝という主人公達と比較して、彼らに近くまた物語の進行役としての立ち回りから、結絃は全編を通じてある意味異質な存在感を放っていた。
将硝の関係を宇宙空間に喩えた鷹岑だが、結絃はそう言う意味で地上にあってそのふたつの天体をずっと観測していた一個の人間。

西宮硝子というメインヒロインは、ある意味この将也・結絃という本質に共通するキャラクタで引立てられていた存在であった。というややうがち過ぎな見方も出来ると言える。
写真を応募したのはママ宮。それが受賞したのが切っ掛けで不登校の克服の端緒を得た結絃。勉強の遅れを取り戻そうと、将也に頼み込む結絃。そして、硝子の東京行きを応援する決意を決める将也。

聲の形のターニングポイントには、必ず結絃が存在した。ビジュアルを除いての結絃という存在と、将也と共鳴する思い。実質二人主人公たる論拠が、漠然と見えてくるのを確信した話であった。


単なるワガママだ (石田将也)
そうだろうか。硝子が好きだから。好きな人に遠くに行って欲しくない。そう思うのは決してワガママなどではないだろう。
変な客来てないかとか (仝)
俺のこと??
これが 私 (川井みき)
肩肘を張らず、良くも悪くも自分を解放した先に見つけた、素顔の自分。川井の存在はそれを示していたのだろう。
助けておくれようダンナ (西宮結絃)
将也が頭が良いと言うことを裏付けた設定。
頑張って100点とろうな (将也)
将也が結絃の前向きさを受け止めて決意した瞬間である。硝子にも自分にも後悔をしない選択の決意である。