ハネムーン編から通過儀礼へ繋ぐ一縷の疑 問

『ハレ婚。』第6集▼ハレ婚。 第6集
著:NON 構成:手塚だい/ 評価★★★

第48話~第54話をハネムーン編、第55話~第57話を前園家激震編序幕と言ったところだろうか。
龍之介への想いに気づいた小春が彼や柚子・まどからとの距離を縮めようと提案した新婚旅行“ハワイアンズ”編が、今巻の序中盤を占める。或る意味、作中で 言明していた福島県いわき市の“スパリゾート・ハワイアンズ”そのものの宣伝的色彩をバックグラウンドとした構成。
その重視されてきたハネムーン編では、龍之介に対する小春の払拭しきれない途惑いを悉に表現する一方で、肝心の柚子・まどから龍之介を囲む主軸二人と、小 春の友好度や、龍之介そのものとの関係変化は目を瞠るほど際立った部分はない。
ハネムーンを通じて、当該作品の基本テーマとされる“ハレ婚”に対する価値観の変化を、主人公・小春によって表現はされてはいるのだが、変化そのものにつ いては六,七話を費やすほど劇的なものだったのか、という疑義は拭えず、正直な話間延び・冗長・引延しという一般的な批判的感想もあながち的外れなもので はなく思える。
今巻の大部分を費やし描かれたハネムーン編の最終において、連載当初から一部読者層(主に男性読者か)で懸案となっており、またこうした青年誌系における ハーレム系・恋愛系の必然的常道とも言える場景を迎えかけるのだが、それがハレ婚。そのものの物語の枢機として活かされ、打ち込む覚悟が問われている(少 なくとも、五〇話越え単行本5集超えという意味で)。
今巻終盤には、小春の前途に暗雲を立ちこめんばかりの家庭事情がプロローグを迎えるわけだが、いわゆる殆どの人々が一生のうちに必ず迎える「通過儀礼」に 対する作者NON氏の価値の差違が表面化しつつあると言って過言ではなくなっている。
第5集までは、NON氏の描く世界観の上に立ち、それなりに感情移入も出来ていたが、今巻以降の伏線回収や、相関関係の収斂についてここに来てようやく疑 義が生じつつあることは隠しきれない事実でもある。故に、今巻の評価は星3とした。

ハワイアンズのステマ、柚子とまどか埋没気味に

お笑い芸人「NON STYLE」の井上裕介がオビのコメントを寄せたとされる「ハレ婚。」、ノンスタ井上というと、鷹岑的には瀬尾公治氏の「風夏」に絡んで瀬尾氏と対談した と言われているが、井上本人の漫画趣味と重ねて講談社サイドの広告塔となっているのかという印象が先行する。芸能人は事務所の仕事として活動するものだか ら、ここでいきなりノンスタ井上がステマを展開されてもいまいちピンと来ない部分があるわけで。
だが、それも結局はハレ婚。が人気があると言うことの証左と言うことなんだろうか。鷹岑にはいまいちよく解らない。

さて、ステマと言えば当該第6集は、一言でいえば、福島県いわき市にある「スパリゾートハワイアンズ」(旧常磐ハワイアンセンター)のほぼ特集巻。スパリ ゾートハワイアンズの公式サイトやSNSでは今のところ(2015年11月12日)直接言及はされてはいないが、作者NON氏の肝煎でハネムーン編として 二千枚超の取材写真を基に龍之介・小春、柚子・まどからの酣楽の舞台となった。
そんなほぼ単行本の7,8割方を掛けて展開したハネムーン編だが、その事自体で主人公格のキャラクタ達の人物相関図が劇的に動いた形跡は見当たらない。動くのはその後日談以降の話であって、ハネムーンそのものは単に作者が描きたかった情景である、という一言に尽きよう。

取材したものを活かす。それはそれで良いのだが、肝心の舞台で小春を囲む龍之介等伊達家の面々がどう進化したのか。本来小春に対照される柚子やまどかが埋 没化されつつあり、ただハワイアンズ編を描きたかった・・・と言うだけでは済むまい。これは紛いなりにもハーレム婚という非現実的ながらも、常在修羅場の ような世界観の中にあって、暢気に水浴びしてワイワイキャッキャじゃやっていられまい。
単行本の大部分を割いて描いたのだから、後に多くの因果がこのハワイアンズで含まれていなければまさに冗長・引き延ばしの話数消化という譏りも免れないだろう。

龍之介との肌の重ね合い……の筈だが!?

ハワイアンズ編は正直、スルーしても何ら影響はない。本番は第55話以降と言うことになる。まあ、龍之介が「ハワイの先に行こう」と言及している時点で、ハワイアンズ編はコンセプト的には詮ないものであったと言うことを自ら言っていると言うことである。ハレ婚。第56回より
鷹岑は男性読者であるがゆえに、フェミニストの目線には立てないのだが、さてはて紛いなりにも青年誌畑、ハーレム、恋愛、登場人物殆どが成人、という世界 設定でそう言う場面が50話を過ぎて殆ど見られずと言うのも難儀な話ではある。まあ、鷹岑は別に小春の裸やよがる場面を舐めるように見てみたい、と言う風 には思わないのだが、それにつけてもハーレム結婚生活というファンタジックな設定を強調している割には、そう言う場面だけは妙にリアリティを追求している 作者NON氏。
小春は3000万円で身請けをされた身ながら、龍之介に対する想いは猶もぎこちない。焦らすことこそ快楽を増幅させる、という一流の娼妓よろしく龍之介を 虜にする術を云々とは遠く、何故かワガママ貧乏姫状態。それを身請けの大人・伊達龍之介はそもまた一興とばかりに小春の歓心を買うことに大人の対応を見せ ようとする。
ある意味、御都合主義だが漫画らしい理想を見せる。だからこそ、意味のある場面を示すべきだと鷹岑は全ての漫画に対して言っているのだ。

今巻、小春と龍之介が迎えるべき最大の通過儀礼だが、結末は……敢えて述べないでおこう。
ただ、それ以上に此の世の全ての人々が殆ど経験することになるひとつのイニシエーションが、ハレ婚。第6集の終盤から始まるのだが、それについても鷹岑は疑義を燻らせたまま、次集へと持ち越すことにしよう。