東日本大震災五周年記念特別編

ゴーガイ!明日へゴーガイ! 明日へ
評価★★★★★

東日本大震災五周年記念特別編、という事もあって編纂された飛鳥あると氏の人気作の後伝。物語の時系列は最終集最終話から5年。
相関図としては照里支局の記者で主人公の坂東さきるが最終集で、本社異動となり、今集では支局長・小田原も本社異動となったという設定。本編で活躍してい たドイツ人のイヴァン・シュルツは出番を見ない。巻末には「コミックいわて」でシリーズ連載化されている「キリコ、閉じます!」のクロスオーバーが収録さ れた。
ゴーガイ!本編の基本コンセプトは文字通り震災後5年間の沿岸南部と内陸遠野、被災者の喜怒哀楽・苦悩・死生観が作者・飛鳥氏の緻密な取材経験を基に脚色 再現されていて、主人公達同士の絡みという場面は殆どなく、主人公が取材に訪れた先の人々を純粋に物語の主人公として位置づけた、准オムニバスの形式を 採っている。そのため、主人公・坂東さきると小田原、イヴァンらの関係に注目したいという視点からは大きく外れているので注意。

東日本大震災関連の著述は数多く存在する中で、当作は煌びやかな復興感動物語というような様相を得ず、苦悩を土台に前向きに進もうという『静の心情』を表 現されていると言える。「コミックいわて」の派生作品の中でも、飛鳥氏の描く当作がいかに地道な人気と支持を受けていることがよく分かる。
また、今回はイヴァンの出演がない、と言う紹介文からゴーガイ!のシリーズ連載の火は消えていないということの意味でもあるだろう。そこに期待。
そしてクロスオーバー作品である「キリコ、閉じます!」は必見で、こちらの主人公格である小林真帆と、坂東さきるがほぼ同一人物に思えるという不思議さが面白く映えます。

真摯に受け止める、沿岸地域の現実と強さ

この作品に挙げられているオムニバスのテーマは、岩手県沿岸地域の人々の現状と課題、そしてこの5年間に亘る現状と心の変化というものを作者飛鳥氏の取材 を基に、主人公坂東さきるに仮託している。岩手県に住んでおり、日々のローカルニュースを見ていれば、見たことのある人々や場面があり、改めて漫画に描き 起こしたのか。という印象が強い。
個々のストーリー性はオムニバスで、全3集に亘ったゴーガイ!本編のようにさきるや小田原等のメインキャラクタ同士の絡みはなく、ストーリーテラーの要素 が強いので個別のキャラを楽しむと言うよりも、文字通り岩手県の沿岸地域に生きる人々の様子を嗅ぎ取って欲しいという意図が大きいと感じるのである。購入特典書き下ろし

メインは坂東さきる(作者飛鳥氏)の取材レポート

この作品の最大の着目点は、メインパートの漫画よりも幕間の坂東さきるレポートとした飛鳥あると氏の取材記事である。
本編オムニバスのコンセプトとなったものを解説と写真で掲載しているのだが、地元ならではの親近感がある一方で、全国的な視点からすればいささかローカル過ぎな部分も否めない。
確かに、震災5周年というメインコンセプトによって誕生した続刊ではあるのだが、遊び心が余りなかった点は残念な部分ではある。