INNnostalgiaオリジナル短編集/それでも僕は君が好き・後日譚
サムデイ -エンディング③-
~逢いに行くよ featuring DEEN from 1998

 芹澤祐輔サムスン

真夜中の帰り道、思うのは変われない明日の自分。運命と諦めて眠るほ ど、人生を棄てていない。
こんな長い夜は――――遠い想い出まで…忘れた燃え方探しに行こうか
逢いたい! 今の君(サムスン)にすぐに逢いたい! 君のいない街で…
君の名を胸に抱き駆け抜けた。それだけが全てだった
夢に見たこの街の将来(くらし)にも何もかもわからなくて。
他人の目にも映る…同じ日々に埋もれ、いつしか答えを見失っていた…
逢いたい! 今の君にすぐに逢いたい! 君が側にいた頃に…
あの日の自分を誰よりも知っている君には、幼い自分がいる
逢いたい! 今の君にすぐに逢いたい! 君に燃えた頃
逢いたい! 今の君にすぐに逢いたい! 君のいない街で…

単行本第7集180ページ~ イメージ「君のいない街で」

「会いたいんです!」
 芹澤は悲愴とも、この上ない情熱とも取れるような震える声で、そう静かに呟いた。
 鬼気迫る形相。悍ましさを感じたじろぐ彼女の友人が持つスマートフォンから、懐かしくも心の真綿に沁み込むような、玲瓏とした声が芹澤の鼓膜に響く。
「芹澤君?」
 その瞬間、芹澤の胸底に鬱積していた熱い想いの塊が、堰を切ったように溢れ出す。
「サムスン!! 俺、絶対会いに行くから!!」
 声が炎となって、粉雪を溶かす。
「ぷっ……あははははははははっ!」
 スマートフォンの音が割れるほど、彼女は放笑していた。何を馬鹿な事を言っているのか、と、芹澤は顔を引きつらせる。
 ほんの十数秒だっただろう。それでも、とてつもなく長い時間、そして何物にも代えがたい大切な人の声だった。
「はは…………」
 ふっと、笑いが跡切れ、静寂が続いた後、スマートフォンはこう伝えた。
「うん」

 その答えに、愕然となる彼女の友人。怪訝そうにスマートフォンの画面を見つめ、芹澤を交互に眉を顰めて見回す。一方、芹澤は急に力が抜け、その場にへたり込んだ。積もりかけの雪が溶け、ジーンズを濡らした。
 芹澤の顔は酷かった。襤褸糞に殴られたような得も言われぬ形相で、目を腫らし、鼻水まみれで街路灯に浮き上がり、まるで妖怪だった。
「ばんご……番号! 変わってないから!!」
 芹澤は舌をかむ勢いでまくし立て、それから何も話せなくなった。返答もないまま、彼女の友人のスマートフォンは切れた。

サムデイ-エンディング③-第1話「リマインド(仮)」、本文一部抜粋
イメージCV

芹澤祐輔 … 江口 拓也
サムスン … 日笠 陽子

祐輔の父 … 村上 新悟
祐輔の母 … ゆきの さつき

サムスンの父 … 宮内 敦士
サムスンの母 … 井上 喜久子

アトモスフィア・イメージ

◆君のいない街/南こうせつ 作詞:庄司明弘 作曲:南こうせつ
◆雨がいつか上がるように/DEEN 作詞:樹林伸 作曲/山根公路

◆逢いにゆくよ/DEEN 作詞:池森秀一 作曲:古井弘人

近日、第一話を公開