シンプルなストーリー構成が惹き付けられる闘牌漫画

天竜牌 第1巻▼天竜牌 第1集

評価★★★★★

マンガボックスで2017年2月現在連載中の第1巻。
「神様のメモ帳」の杉井光氏、「ソムリエール」でその硬質な画力を示した松井勝法氏がタッグを組んだ空想麻雀バトル漫画。
場末の小さな雀荘。主人公・天ヶ崎竜也は、姉と妹と共に失踪した父・丈司の帰りを待ちながら、切り盛りしていた。
そんな竜也の元へ、突然「牙崩会」の「花竜(ファロン)」と名乗る謎の美女が現れ、父の借金80億円の肩代わりを要求される。
唖然とする竜也に花竜はサイコロを差しだし、これを振れば負債は無くなると言われ、言われるままにサイコロを振る。それが、竜也の運命を大きく変えることになる、「天究牌」への嚆矢となるのであった……。

ス トーリーは非常にオーソドックスな闘牌漫画で、第1巻現在では基本的に二人麻雀形式で敵となる相手と戦う。武器は麻咒(マントラ)と呼ばれる特殊技能。主 に牌を操作し、対局を優位に進めるというもの。負ければサイコロとなって死ぬという、サバイバルホラー要素もあるが、グロテスクな部分は皆無なので、苦手 な人も安心出来る。
ヒロインとなる孔雀院紅音との開戦を契機に、竜也や紅音と戦うことになる、敵キャラクタとの掛け合いがシンプルながらも続きが気になる面白さなのが特徴。
竜也の姉と妹、ヒロイン・紅音、最大の宿敵と目される鷺宮雅人、謎の美女・花竜など、登場人物が全てキャラが立っているため読んでいて飽きが来ない。
派な筆致の松井勝法氏が描くキャラクタも良い。昨今の画一的な美少女絵師たちとは一線を画す画風は、古風という訳でもなく、新しい媚態的な萌え風味でもない、幅広い年代に受け容れられやすい、程よい硬さの線である。

闘牌漫画としては非常にシンプルだが、不思議に惹き込まれる。ネットでも「ヤバい」と賞賛された根本は、やはりバトル漫画の基本に則った、読後のワクワク感をくすぐる展開に他ならないだろう。
ヒロインである紅音は、試合中の険しい表情とは変わって、男に対して免疫がないため、竜也を相手に天然ボケな面も見せるなど、シンプルな世界上で極めてキャラが立つところが魅力的なのである。
ただし、恋愛要素は今のところは皆無。そう言う方向に期待しないで、竜也や紅音に感情移入をしましょう。

イケメン少年、初手から美少女と血戦。読者を引き込む

この漫画を読んでいて気がついたことがあるのだが、主人公・天ヶ崎竜也は見た目通りのイケメンで、これと言ってユーモア性もなければ汚れ役といった三枚目的な立ち回りもない。一言でいえば面白くも何ともないキャラクタなのである。
しかし、鷹岑は連載開始からこの漫画は先読みをしてまで続きが気になって仕方が無い、数少ない作品の一つであるのだ。
作画の松井勝法氏とは誰なのか、検索をしてみたところ、「ソムリエール」というワインをメインテーマとした作品を青年誌で連載していた実力派作家だと知 る。そして、かの作品も一瞥してみたが、成る程。丁寧な筆致という評判も然りだが、硬派でやはり個人好みの絵柄だ。全てはそこから始まる。
孔雀院紅音
マンガボックスは作品作家の出入りが非常に激しいが、天竜牌は毎週丁寧に話数を上げているので、個人的には非常に評価が高い作品としてみている。何よりも やはり女性キャラクタが硬い筆致にしか表現出来ない美しさと可愛らしさを持っている。天ヶ崎竜也の姉と妹を初めとして、天究牌への案内人・花竜の妖しい色 気。硬派な筆致でなければ出せない部分である。
竜也は常にシリアスで戯けたところはないが、それが嫌味なく読者にとって良い感情移入の器となっている訳で、そんな彼の視点を少し広げてみれば、周囲は美女・美少女の楽園なのである。
平穏な暮らしから一転、闘牌の世界に引き摺り込まれた竜也の初戦の相手は、孔雀院紅音。初見からヒロインとなること間違いなしと確信した、ヒロイン然の美 少女。指定牌を消滅させる麻咒・絶輪を駆使する無敗の女帝も竜也の前に敗れ去る。残金が尽きていないので生き残ることが出来たが、ここから紅音の女の子然 とした本当の姿が垣間見える。
竜也を前にすれば赤面狼狽、天然ぶりが炸裂。しかし竜也は朴念仁。彼女をまたいずれ戦うことになるかも知れない相手として以上にはまだ見る余裕がないという。まあ、それだけでこの作品に恋愛要素を求めるのは酷だと言う事なのだろう。

まあ、ソムリエールもそうだったとは思うが、硬い筆致でバトル物をテーマとした際に、惚れた腫れたの甘い展開はあまり必要のないことなのかも知れない。ただ、キャラクタはやはり、むさい野郎たちばかりよりは、可愛い美しい女性たちの方が良い。当たり前の話である。

竜也「豊川愛海のファンだったのに!」~ぶっつぶす(打倒・牙崩会)

豊川愛海天ヶ崎竜也の第2戦はグラビアアイドルの豊川愛海。麻咒「水葬」を操る難敵だ。「この局、溺れ死ぬ」と竜也にエフェクトが掛かり、終盤には「引き摺り込まれる」と愛海にもエフェクトが掛かった。
鷹岑はこの豊川愛海戦を読み進めて、多分勝てば普通に(愛海は)死んでしまうんだろうな。と覚悟しながら読んでいたが、やはりどうも美女・美少女が死んで しまうようなストーリーは辛い。出だしは死合いを愉しんでいる風の相当なビッチだったが、終盤趨勢が決まると急にしおらしくなって竜也に「私を貰ってくれ ないかな」などと縋る。男はこう言うキャラに弱いんだ。いや、実際鷹岑もこの場面に出くわしたらつまらん男になってしまうだろう。
しかし、竜也は愛海を麻咒にした上で、牙崩会に宣戦布告する。命を懸けたクソゲーを叩きつぶし、これまで死んでいった人たち全てを取り戻す。
途方もない宣言だろう。
まあ、戯けたところのひとつもない真面目な主人公・竜也だが、実は豊川愛海の熱烈なファンだったのではあるまいか、とさえ勘ぐる。憧れの愛海を天究牌で破 り、麻咒にしてしまった。愛海のサイコロを手にしたのは、やはり彼女のファンだった。それが第一義だったのではないだろうか。
まあ、恋愛要素もないし、孔雀院紅音も今のところ竜也に対して異性としての好意を持つ持たないという視点以前の問題だから分からないが、竜也が新たに得た麻咒が、豊川愛海のものだったと知った紅音が嫉妬に苛つく、というベタな展開があったとしたら、それもまた良い。
理想型として、仮に天究牌が潰されて全員生き返ったとき、愛海が竜也にべた惚れになるかも知れないというのもまた、ありがちだがこれ以上にない醍醐味でもあろう。
連載は続いているので、今日のところはここまでにしておこう。