百合ラブコメ、登場人物ほぼ2人の掛け合いで展開

将来的に死んでくれ 第1巻将来的に死んでくれ 第1巻

評価★★★★

週刊少年マガジンで処女作「お友達から」を読切で掲載し話題となった、長門知大(ちひろ)氏のラブコメ。別冊少年マガジンで2016年11月号から連載されている。
主人公は菱川俊(カバー表紙・右)、ヒロインは刑部小槙(同・左)。文字通り百合系ラブコメである。
タイトルが「死んでくれ」という強い表現だが、ストーリー展開は主人公がヒロインに猛烈に恋のアプローチをするが、ヒロインはそれを躱してゆく、と言った もの。主人公がボケ、ヒロインが突っ込みという漫才的要素が強く、百合と言ってもサービスカットは殆ど見受けられないのが特徴。
「お友達から」でのストーリー構成技術の素晴らしさから連載を獲得したときは非常に期待しただけに、第1巻は今後の深みのある展開へのイグニッションとして位置づけたいところだ。いわゆる下ネタが続いているが、ネタの枯渇前に相関関係に奥行きを持たせたい。

一方通行の恋、満更でもなく

この作品を読むに当たって、主人公・菱川俊について、その財布は無尽蔵であるということを念頭に置いておく必要がある。どこにそんな資金が、という疑問は不要。そういう設定なのだから、そう言う前提に立って読まなければならない。菱川俊
漫画なのだから細けぇこたぁいいんだよ! なんて開き直りもそこそこに物語は菱川俊のストレートな性的欲求から始まる。第一話にして庸凡なるラブコメが行 き着くテーマを見据えてヒロイン・刑部小槙に対する攻城戦を全力展開する。札束をちらつかせても全く心が動じない鉄壁の小槙。お金をちらつかせる部分が余 りにも露骨で人によっては大いなる不快感の素因にもなり得るのだが小槙は落ちない。その金を持ってそう言う店に行けばいいんじゃない? なんてことも言わ ない(キャラクタ設定上、問題あり)
しかし、当の刑部小槙も俊との性交渉そのものは拒否しているが、友人同士としての付き合いには満更でもない様子である。この作品はそう言う部分を楽しむという意味があるのかも知れない。

まあ、そうだとしてもスタートダッシュに作者・長門氏も随分とハイテンションなメンションを飛ばしていると言って過言ではない。正直な話、ネタ切れが心配だ。
ここだけの話だが、この作品は長期連載を標榜したものではないというイメージである。長くても二十話前後までがボーダーラインと言えるだろう。
刑部小槙
キャラクタは非常に良いのだが、如何せん序盤のストーリーがオーバーヒート気味である。早晩のネタ切れが懸念され、勢いが右肩下がりとなる可能性が高い。
ラブコメというのは確かに惚れた腫れたの基本路線はあるが、テンションそのものは普通で良い。何も異世界に通じたり、異形の物が現れて世界の平和を脅かす。なんてファンタジー系でもないのだから、日常の風景を表すような感覚で構わないと、鷹岑は考える。

「お友達から」の要素を蹈襲して

長門氏の知名度を上げた読切り「お友達から」のクオリティが高かっただけに、この作品に対する気負いは相当の物だとは思う。
お友達からは主人公と相手役(男)が登場する青春譚だが、基本的にラブコメ色を抑えつつ、相関図に厚みがあった。鷹岑が常に言っている「嫌いなキャラ」の設置が構成に厚みをもたらし、物語を面白くさせたのである。詳しくは鷹岑家文書の過去記事を参照されたし。

そのお友達からはこの第1巻には収録されなかったが、最終巻を含めた次巻以降におそらく収録されるだろう。「将来的に死んでくれ」との対比を楽しむというのも、また一興である。