麻雀漫画なのにファンタジーサスペンス。 お色気主体の混成作品

天竜牌 第2巻 ▼天竜牌 第2巻
原作:杉井光/作画:松井勝法
評価★★★★★

賭ける物は命。文字通り、生死を分けし闘牌漫画の第2巻。
マンガボックス連載の豊川愛海編と、美名坂姉妹篇の前半部分を収録し、単行本ベースとして第4話・第5話としている。
前巻で戦った孔雀院紅音をメインヒロインに据えているが、恋愛色は殆どなく、天究牌と称する闘牌ゲームの謎が主体。
コミカルな部分は序盤の紅音との掛け合いに留まり、それ以外は緊迫したシリアスパートとして遷移しているので見易い。

単純な麻雀漫画ではないので、ルール等を熟知していなくても大丈夫だが、実際に麻雀をしている場面は少ないので
そう言う部分に期待している読者からすれば物足りない部分がある。“麻咒”と呼ばれる特殊能力がキーワードとなっている
が、今巻においてはそれの核心に向けた言及も殆ど見当たらないので物語としての進行はあまり見られない。
しかし、松井勝法氏の筆致が秀逸で、ヒロイン・紅音の存在に、対戦相手も露出度の高い女性が続くので、男性読者として
は全体的にサービスカットが多く、そう言う意味で愉しむことが出来る。
麻雀漫画としてはまだ盛り上がりに欠けるが、構成そのものは完成度が高いので期待値は維持し星評価は5です。

女性は殺したくない。そんな彼が目指した挑戦のあとさき

昨今、実に驚くべき将棋ブームである。14歳の4段棋士の快進撃やら映画の公開、遡ればスマフォアプリによる不正疑惑など、良し悪しともに将棋は注目され てきた。
それに比べて、麻雀はメジャーなのに地味。あまりメディアの話題を攫うことはない。
天竜牌第2巻においては、フジテレビ系の麻雀番組「THE われめDEポン」をモチーフした番組や、タレント・叶姉妹に女流プロ雀士・二階堂姉妹をブレンドしたようなキャラクタも登場させるなど、随分とメディアを 意識したストーリー構成となった。
豊川愛海
この漫画はマンガボックスで今のところ休載もなく、堅実に毎週更新されているが、他作品と比較してそれほど高い話題性というものがない。将棋漫画でさえ、 世間のブームに比較してあまり振るわないのに、マイナーで賭博のイメージが強い麻雀ならば尚更である。
しかし、天竜牌は文字通りカチカチの麻雀なのに、「哲也-雀聖と呼ばれた男-」のような賭場臭さはない。実に華やかなのである。

物語の基本舞台である天究牌のコロシアムで天ヶ崎竜也が対戦した相手は、今のところ全て女性。美女・美少女たちである。アウトロー然とした男が相手なら ば、竜也も容赦なく戦う素地もあるというものだが、孔雀院紅音から豊川愛海、美名坂姉妹と竜也の優しさの盲点を突くような見目麗しき美女たちが立ちはだか る。それは竜也でなくても殺したくはないというものだろう。
しかしながら、舞台設定のもう一つの枢要とも言える負債だが、額面では億単位が云々としているのだが、正直実感がない。現ナマが描かれているわけでもない のでそうなのかもしれないが、商店街のオジサンが、100円の商品を「ハイ100万円!」と冗談めく、といった体である。まあ、実際に勝敗で動く金額が億 単位未満というものがないので、そういう危機感というのが少ないのかもしれない。
◆豊川愛海 … 天究牌第2回戦の竜也の相手。麻咒「水槽・水葬」を操る。グラビアアイドルという設定から竜也との対戦時はビキニ姿という読者サービスをもって登場。「童貞(まだ対戦相手の命を取らない意)喰い」の異名を持つとされてきたが、竜也の機転の前に敗れる。竜也の満願成就で生き返った際に、紅音の最大のライバルとして宣戦布告してほしいキャラクタである。
鷹岑は正直、漫画であれなんであれ、女性キャラクタが惨死するというのはあまり見たくない。理由は単純で、可愛くて綺麗な女の子が死ぬのを見たくない。というものである。
第2巻の豊川愛海編は、巨乳のグラビアアイドルという設定で竜也と戦うのだが、数多くの対戦相手を麻咒化してきた猛者の割には、竜也との戦いに敗れる際には実にしおらしくなる。
まあ、それでなくてもどんなに悪女然としていても、死なせてしまうのはあまりにも勿体ない。しかし、負ければ麻咒となって死ぬ。というルールを改変するこ とはなく退場することになるが、竜也は彼女の麻咒を受け入れる。美女の骨を身体に埋め込む。ある意味究極のアブノーマル・フェティシズムのような感覚だ が、これが仮にごつい男の麻咒だったらと思うと、竜也にも一定の選択肢というものが必要になるだろう。
麻咒となった愛海を身体に取り込んだ竜也は、天究牌に高らかに喧嘩を売る。「お前ら全員しばいて、死んでいった人たち全員生き返らせたるわ!」
多分、そこまで描き切れるかどうかは微妙だが(ラスボス格・鷺宮雅人と対決する場面で終了する可能性もある)、その気概は相手が美女だからこそのものであることは、言うまでもないだろう。

麻雀漫画ながらも主眼は天究牌というシステムであり、竜也や紅音ら主人公・ヒロインは麻雀で闘うというよりも、天究牌システムの謎に立ち向かう。という志向性が強い。ゆえに、「哲也」のような賭場臭さがないのだ。

まあ、それでも露出度の高い女性が続々と登場し、竜也の騎士気質が触発されるのは望むところであろう。ソムリエール・松井勝法氏の硬質な筆致がまたこの世界観によくペアリングされているので長い連載を望み、「天」を打ち倒して欲しいところである。