連載第一回で陳腐さを匂わせ、回を重ねるごとに化けつつあるデス・ゲーム

ワールドエンドクルセイダーズ
(2017年28号~)原作/biki 作画/不二涼介

異 能力×デスゲーム新連載! 人類滅亡まで、あと100日
この新連載で、世界を起爆してみない?
最期の一人になるまで、嗤え。
(2017年28号アオリより引用)

「神さ まの言うとおり」以来のデス・ゲーム、再び。二番煎じの烙印返上なるか

ワークル・第1回この漫画の第一回に目を通した時、やけにぎらつく筆致だなという第一印象があった。ストーリーはともかくとして、 非常に綺麗な線だが週刊少年マガジンらしい雰囲気も持ち合わせているというものだった。
ネット上では「神さまの言うとおり」という作品の二番煎じではないか、という評判もあるようだが、私は「神さま~」を読んでいないのでこの作品は新鮮な意 味で捉えることが出来た。神さま~を比較することは出来ないのでご了承願おう。
まあ、私はこう言うデスゲーム・パニックホラーというジャンルが基本的に苦手である(モブキャラとはいえ、女性が惨死する作品は特に)のだが、この作品は そう言う苦手意識の方が先行しながらも、強烈な印象を与えるのには十分だった。
まず、作画・不二涼介氏による筆致が硬派ながらも非常に美しい。すぐに死んでしまうようなモブキャラも丁寧に描かれている。第一回ならではの気合いの入れ 方はさすがだ。

だが、なかなか馴染めなかったのがそのファンキーなアオリや言行だ。どうも個人的に軽さが目立つような気がしてならない。世界設定は“神”が『神の五本 指』と称する強敵、いわゆる中ボスを出現させ、世界各地を崩壊させている。第一話で豪州、米国が壊滅したという厖大な設定とされながら、劇中はどうもラッ プのような軽音楽然とした装いに、不快感すら覚えていたである。
巻頭カラー直後の本編ページでは続々と街の往来が「蠑螈」と名乗る「神の五本指」によって自殺させられる強烈なスタートとなったのだが、やはり色々と突っ 込みはあるようだ。
何故か皆、柳刃庖丁を持っていて、それで胸元を突いている。首相官邸に単身乗り込んできたモブの美女も、柳刃庖丁だ。蠑螈の仕込みなのか、原作者か、作画 のこだわりかは判らないが、妙に気になったものである。
こう言う世界設定や本編進行において事細かい指摘や整合性についていちいち述べるのはきりがない。世界設定が喩え似ていようが何であろうが、一個の作品と して構成が良ければそれで良いのである。

ララ ラ・リラ~ヒロイ ンの不在から、中ボス格の美少女をヒロインに配置換えした強攻策

ラララ・リララララ・リラ。第一話の五本指紹介時から、異彩を放っていたこの美少女キャラが、まさかヒロインとなる展開になることは予想がつかなかった。
一応、「神」が空間を切り裂いてドラゴンクエストのモンスター・リップスよろしく、高らかに神の五本指はチート級に強いですからね!と宣戦布告した舌の根 もまだ乾かぬうちに。という感じなのだが、同じヒロインになるにしても主人公との激闘があって降服する。と言うのならば、まだデス・ゲームたるや。といっ た感じなのだろう。
まあ、考えてみれば第一話のこの美少女が仲間になってヒロインとなる展開が来れば、やっと普通の面白さになるのだろうとは思っていた。理由は単純で、主人 公・桂しるし(やっと主人公の名前登場)に、ヒロインたる恋人や幼馴染み系がいないのである。いかにイケメン系とはいうものの、目下の敵が蠑螈というスキ ンヘッド男。せっかく不二氏の綺麗な筆致があると言うのに、野郎同士の打ち合い心理戦だけでは読む気も失せてくると言うもので、そう言う意味においても、 ラララ・リラは名前をしてもヒロインの地位に尤も近い存在であるというのは、結果論だがそうだった(この先において主人公の知己の女性が出てくるというの はあざとい)

萌え派を一気に捉えた純真無垢なヒロインと、クズ化する主人公の対比

桂しるしにキスをするラララ・リラ私がワークルに対する評価を一息に変えたのは、言うまでもなくラララ・リラのヒロイン配置換えからである。所詮、私も美少女キャラ萌えクラスタの残滓と言ったところなのだろう。
確かに、リラによる求心力は非常にチープなのかも知れない。だが、その直球過ぎるくらい直球な主人公・しるしに寄せるリラの言行は、それまで批判的だった私も一気に旗色を変えるのに十分だったと言える。そう、可愛くて萌えさえすればどんな駄作にも花が咲く(笑)
と言うのは冗談だとして、いきなり主人公の前に現れて「好きになってしまったので、恋人になって下さい」という中ボスキャラに呆気に取られ、言う通りになるやと思いきや、躊躇いもなく主人公にキスをしてくる。これで萌えなきゃ男じゃないのである。

しかし、一応は「神」が出現させた五本指の一・薬指と位置付けられるリラが、そうそう簡単に一人間である主人公に心底惚れるのかという疑問と、縦しんばそうだとしても、「神」に裏切り者として誅伐されはしないものかという心配の方が大きい。
まあ、そう言う懸念は織込み済みなのだろうから、多分リラは死ぬ(消滅)ことはないように思えるが、このゲームが終わって五本指の役割が満了した時にどう なるか。リラが人としてしるしの伴侶となるか、消滅してしまうのか。ラララ・リラ一人でこの作品を支えていると言っても過言ではない(個人的に)のだか ら、リラは押し掛け女房として、文字通りしるしの生命線を握っていて欲しいものである。

桂しるし一 方、第一話でデス・ゲーム特有の悲劇に見舞われた主人公・桂しるしだが、リラ萌え視点で読めば露骨に闇堕ちが早い。リラの純情につけ込んで結婚前提に付き 合おうと言われた欣喜雀躍のリラ。しかし、しるしにとってはリラは憎き五本指の一つで、人身御供にするのは全くやぶさかではないと言った体。下手をすれば 神様よりも凶悪な魔王の素質すらある。エロゲ・夜勤病棟2の主人公、九羽原総一郎かくやとばかりのどろどろとしたサディストである。
まあ、父を殺害され兄も九死に追い込まれた身の上ならばそうなるのも仕方がないにしても、なかなか主人公としての立ち振舞いが定まりにくいとも言える。
神が定めたデス・ゲーム。しかしその実は運任せ。敵はチート級の神の五本指だがその一人からは強い恋を寄せられ半ば骨抜きに。悪に染まらなければやってら れないじゃねえか! という叫びも聞こえてきそうだが、やはりこの作品が当初からある、ファンキーな雰囲気が物語り全体を少し上滑りさせてしまっている、 そんな気がしてならない。
はっきりとした結論は、美少女ラララ・リラ1人で持ちこたえている。(作品作家を含めて)彼女を不幸にしてしまえば、文字通り作品世界はジエンドだ。大切にしてあげなさいよ、桂しるし(笑)