ドラゴンクエストⅪ~過ぎ去りし時を求めて~プレイエッセイ⑩

白の入江~ナギムナー村

白の静湾に人魚ロミア、独り恋人を俟ち続け 勇者、南洋にて怪魷クラーゴンを伐ち、陽村に喜内游岐を識る


外海の入り江にて霧中に迷いし静謐の海、ロミア独りで漁師キナイ(喜内)を俟つ

外洋に出れば、オーブを探す旅。基本的には話の流れはひとつに集約するのだろうが、フリーハンドである。まあ、とは言ってもイベントなどがあるから行動範囲は狭いと思うのだが、様々な素材を集めるためには暫く自由航行でも良いだろう、と言うことだ。白の入江
ソルッチャ運河の終点を出た途端、濃霧に包まれるイベントが発生。一行は外海初っ端から浅瀬に乗り上げるという波瀾を迎える。静謐の海なのに波瀾とはこれ如何に。という感じである。

乗り上げた船をどう捌こうか。ベテラン航海士アリスちゃんとシルビア姐さんが四苦八苦している最中で、女性陣は波一つ無き鏡のような海原に息を呑んでいた。
静謐の入り江
「幻想の世界に迷い込んだみたい」マルティナが特に食いついた。余程気に入ったのであろうか。風もない凪。南米ボリビアのウユニ塩湖よろしく、まるで歩いて渡れるかのような錯覚になる景観。フェルナンドは進み、岩礁に佇む影に気づいて近づいた。

マルティナ、ロミアのロマンスに想いを深める

DQⅥのペスカニを飾った漁師ロブと人魚ディーネの恋愛かくやとばかりに、そこに孤独に佇む姿は、正に美しき人外の美女だ。
ロミア「キナイ? キナイ……じゃないのね」あからさまに落胆する人魚。しかし、フェルナンドが相も変わらず真顔で真剣。驚きもせず、ましてや捕らえよう何て微塵も思っていなかったことに安心する人魚の美女は、名を「ロミア」と称した。
ナギムナー村に住む人間の漁師「キナイ」を俟ち続けているのだという。まるで止まった時間を表すかのような白の入江に孤独に佇む彼女がとても儚く思えてならなかった。
意外にもマルティナがロミアに深い共鳴を感じたようだ。武闘姫の高名を轟かせながらも、ロマンティックなコイバナに目がない、とばかり。
しかし、かたやカミュは渋い顔で言う。
「人の恋路に介入することは不幸を招くだけだ」ロマンス大好きマルティナ
まるで自分に言い聞かせているかのような意味深なセリフに、フェルナンドも傾聴する。しかし、マルティナはやけにロミアに荷担するのだ。
「あなたはどの位、ここでその人を俟っているのですか」フェルナンドの問いかけに、ロミアは言う「長い間……だと思います」途方も無い時間なのだろうか。漠然とした答えしか、ロミアも言えなかったのである。
ナギムナー村に行って、キナイを探してきてくないか。その願いにフェルナンドはすぐに「はい」とは言えなかった。カミュの言葉も一理あるし、何よりも目的 が違う。オーブ探しという目的がある以上、彼女の頼みとはいえ、一朝一夕に解決するような話ではないように思ったからだ。
「ごめ……」と言いかけた瞬間、ひゅん!という風を切る音と共に、憤怒の表情のマルティナと、彼女の長い片脚がフェルナンドの首元に突きつけられていたのである。
え?何か言った?聞こえなかったわ
「何? フェルナンド。良く聞こえなかった。もう一度、言ってみて?」 次にロミアの哀願を断るようものならば、容赦なく張り倒す。と言う威圧だった。
それでも、マルティナの脚を振り払い、頑と断っても良かった。だが、考えてみればそこまで拒む必要もない。人助けにもなるし、ベロニカがユグノア故城で言った、「海に沈んだオーブ」の行方ももしかすれば彼女が助けになってくれるかも知れない。
結局は旅の打算。そう思われたくなかっただけで、背に腹はかえられない選択だった。フェルナンドはマルティナの足首に手を添えてゆっくりと下ろさせると、 ロミアに言った。「わかりました。あなたのお力になります」いつもの真顔で真剣な表情に、ロミアは驚喜し、マルティナは半分呆れながらも嬉しそうに目を細 めたのである。

沖縄から雲南越理の和華折衷の漁師町、人魚悪魔説のキナイを模範と成す

ナギムナー村ナギムナー村。現時点でロトゼタシアの最南端に位置する小村。と言う割にはちゃんと武器防具・道具屋も備わった立派な町である。
海岸線を辿って東進する一行。途中で漁船団を見つけたが、「ここら辺は危険だから気をつけて行け」という親切な信号を送ってくれたのだ。感謝しつつ、目的のナギムナー村に辿り着く。
沖縄と中国雲南省地域の少数民族たちの住まい、そしてインドシナ半島の田舎の原風景をシャッフルさせたと思わせるような建物が目を惹く。人々の言葉は沖縄訛そのままに、エキゾチックな褐色肌。
しかし、町は男っ気ひとつすらなく、名産品とされる真珠も枯渇。町の女性たちに理由を訊くと、ここ近海に怪魷・クラーゴンが出没して漁域に出られないか ら、男たちは挙ってクラーゴン討伐に出帆しているとのことだ。先ほど気をつけろと信号を送ってくれた船団のことだろう。キナイの存在も訊いた。キナイも討 伐船団にいるはず、との話だ。

紙芝居だ が、フェルナンドたちは耳を疑った。子供たちが楽しみにしているという紙芝居。その紙芝居を演じる老婆は、人魚に恋をしたある男の悲劇、という題目を演 じ、子供たちもまた、此村では人魚は凶獣としての価値観である。と告げられた。ロミアが話していた内容とは正反対である。
納得がいかない様子のマルティナ。その疑問を解き明かすためにも、キナイと話をしなければならない。
村の砲術家である「大砲婆さん」からカノン砲を借り、船に搭載。実弾嫌いという風変わりな婆さんだが、クラーゴンを怯ますためだけならば十二分とのことだ。いざ、出帆である。

討伐船団に合流したフェルナンドは、怪魷クラーゴンの出現を待った。奴はまもなくその威容を海中より見せつけた。クラーゴン
「ダーハルーネでの借り、今こそ返すわよん!」シルビアが怪気炎を上げ、カノン砲の先をクラーゴンに向ける。「3,2,1……撃て!」
シルビアの号令下、アリスちゃんがカノン砲の空砲をクラーゴンに直撃させる。風圧と轟音に、クラーゴンは完全に怯んだ。混迷の中、多足による攻撃もままな らない。フェルナンドやマルティナ、ベロニカらの攻撃・呪文によって釣瓶打ちされ、さしたる抵抗も出来ないまま、クラーゴンは討ち取られた。ゆっくりとそ の巨体から生体反応が消え、海中に沈む。
「や、やったー!!」「怪魷が倒れたぞ!!」船団から一斉に喝采と狂喜、そして祝砲が放たれた。漁域の脅威が除かれた事が、どれほど生活再建に繋がることだったのかと言う事がよく分かった。

祝宴と踊りナギムナー村に戻ると、連夜の祝宴。口笛と踊りがあちこちでさんざめく。中にはこの開放的で大らかな雰囲気に乗って求婚し、「そーれ、イーヤーサッサー(嫌さー)」と何気に断られる人もいるとかいないとか。
しかし、そうした殷賑の最中にあって、キナイはいない。訊けば、彼はそう言う喧噪を忌み、今も仲間の漁師から頼まれていた漁具の修繕に桟橋に詰めているのだという。
酒肴に与りきれなかったフェルナンドは、そろそろキナイを探そうと殷賑から離れようとした。

キナイ、人魚を忌避しフェルナンドに真実を告げ、キナイ・ユキ(喜内游岐)の悲恋を語る【小説形式パート】キナイを探しに

フェルナンドは殷賑から離れようとした。その時、彼を呼び止める声。振り向くと、マルティナだった。「私も行くわ」「うん」沈鬱な表情のマルティナに掛け る言葉もない。少し進むと、今度は憤懣やるせなきベロニカの小さな姿。「人を子供扱いして!あったまくるから、私も連れてって!」今度は少し、苦笑いが出 来た。
「マルティナさん、ひとつ訊いてもいいですか」「なに、どうしたの?」「ロミアさんのことです。僕はあなたが彼女に、想いがあるように感じたのです」
すると、マルティナは寂しそうに微笑むと、言った。
「別に、特別な想いって訳じゃないけど……でも、なんて言うのかな。女として、シンパシーを感じるって言うか。自分でもよく分からないけど、なんか、放っ ておけなくて。……って、こんな答えじゃ、ダメ?」「いいえ。十分です。ありがとうございます」フェルナンドが微笑んだ。
「女心って、あなたが考えている以上に深くて、それでいてとても一途なものなのよ!」と、横槍を入れるベロニカ。「心に刻みました」今度はそう言って苦笑する。
人気者・セーニャ殷賑から少し離れた広場に、セーニャがいたが、何故かそこに行列が出来ている。村の男衆だ。
「なに、あれ」マルティナがセーニャに尋ねる。どうやら、クラーゴン討伐で怪我をした漁師たちを無料で治癒していたらしい。しかし、行列の男たちの話が聞 こえてきた。「あの人、可愛いなあ。うちのカミさんよりもいい女だ。はぁ~」どうやら、セーニャ目当てに並んでいるようだ。その様子に、マルティナがおも むろに話しかける。「フェルナンド、あの子、すごい人気ね」「そうですね」「妬けない?」「妬ける……とは?」真顔で真剣にマルティナを見つめるフェルナ ンド。「あ……」失敗したかな、という表情のマルティナ。その様子に、あからさまにため息をつくベロニカ。

キナイ(喜内)フェルナンドは湾に伸びる桟路の真ん中で、小さな帆船の帆を繕う作業をしていた男に声を掛ける。「あなたが、キナイさんですか」「だとしたら、何だ」偏屈な老人ならばわかるが、この若さでこの偏屈さに、フェルナンドは途惑う。「あなたに、用事があってきました」「違う」
すると、ベロニカが騒ぐ。「しらばっくれんな! ナギムナー村のキナイっていったら、アンタしかいないじゃない!」ベロニカの凄味は一部のモンスターすらもたじろがせる。老練な人物ならばともかく、キナイはまだ若い。あっという間に気圧されてしまった。
事情を話すフェルナンド。すると、キナイはなおも忌まわしそうな表情で、冷たく答える。

「あんたらが探してるキナイってのは、俺のじいさん、キナイ・ユキ(喜内游岐)の事だろう」
彼は語る。ナギムナー村に伝えられた、「人魚の呪い」の真実を。

それでは、また次回。