「煉獄のカルマ」から一転し たハートフル育成型ラブコメディ、完走に期待が掛かる

五等分の花嫁 第1巻◀五等分の 花嫁 第1巻
評価★★★★★

週刊少年マガジン・2017年第8号に掲載された読切版の好評を得て、盆前の36・37合併号から本格連載が始まった、マガジン新連載攻勢の後半部を象徴 するラブコメ。
第41号の第5話までの本編、巻末には描き下ろしが収録されている。
前作である『煉獄のカルマ』の原作者・廣瀬俊氏と袂を分かち、単独オリジナル作品として足掛け5ヶ月の構想と執筆でスタート。成績優秀で朴念仁、赤貧洗う が如しの少年・上杉風太郎が、ひょんな事から転入生でクラスメイトの中野五月と知り合い、好待遇に惹かれて中野家五つ子姉妹の家庭教師を拝命するという事 から始まる。

見所は、前作で特筆大書であるその筆致から醸成される美少女達の可愛らしさにあるといえる。ヒロインが五つ子と言う事でそのキャラクタ捌きも懸念されてい たが、第1巻を読む限りでは特定のキャラへの贔屓、不快や偏重と言ったマイナスポイントは窺えない無難なスタートとなった。
第1話は読切版を殆どそのまま蹈襲し、大幅な改変と言えるのは三女・三玖のビジュアルくらいなものだが、この作品を契機に春場氏のファンとなった面々には 読切版は一見の価値があると言える。
この作品は前作の重厚長大な設定とは一転したハートフル・コメディ色を強化した育成型ストーリーに比重を置いているので、いわゆるベタベタとした如何にも という恋愛描写はない。奇しくも同時期に前作で連係していた廣瀬氏が別作品をマガジン本誌で連載作品を掲載していることを考えると、まさに前作の換骨奪胎 とも言えるコンセプトが垣間見え、廣瀬氏との違いを強く打ち出している春場氏の気概を感じ取れる作品である。
こういった多種ヒロイン形式のラブコメではありがちで、不快指数の高いパターンが多い主人公も、今作では赤貧廉潔の士で、五人の美少女に囲まれながらも情 欲の色を見せず、むしろ家庭教師という本分を全うしようと一所懸命になっている姿が非常に好感を持てる。
ラブコメ飽和状態のマガジン本誌で、今後淘汰されるであろう連載作品の中で生き残ってストーリーのウイングを更に広げていって欲しい。期待を込めて星評価 は5である。

春場氏、廣瀬氏と袂を分かち独立独歩のラブコメディで昇龍の気勢を挙げる

「煉獄のカルマ」は電子書籍で揃えようとしたが、途中で購入を止めていた苦い想い出がある。春場氏の筆致はともかくとして、原作・廣瀬氏のあの独特の諄さに飽きが来て止めてしまった、と言うのが正直なところである。
この五等分の花嫁が年初に読切作品として掲載されて雑誌アンケートで好評価を得たと同時に、廣瀬氏もまた原作を新しく書き連載決定を勝ち取る。煉獄のカルマのコンビが事実上、袂を分かった瞬間であっただろう。
廣瀬氏が重厚な人間の強欲な部分を標榜する作品を続けるのに対し、春場氏はいわゆる萌え系ラブコメ路線へと舵を切る。比較をしてもその差は歴然としてい る。マガジン本誌での両者の暗闘は新連載攻勢の生き残りを懸けたものとなっていて目下、アンケートや単行本の売上で明暗が分かれることになるだろう。
ちなみに、私は廣瀬氏の手掛ける新作そのものは嫌いではない。ただ、単行本ベースで支援できるかと問われれば今のところクエスチョンマークがつく。煉獄のじわりとのしかかるトラウマはそう簡単に払拭できるものではないらしい。

週刊連載が危惧されたが・・・

五等分の花嫁の連載版第1話が、読切版と殆ど差異が無いことを確認し、またSNS等で春場氏が週間ベースの仕事に懸ける心情不安とも匂わせる呟きを発したことから、週刊ベースのサイクル維持が懸念されてきた。
煉獄の場合は廣瀬氏が原作として存在していたが、五等分は春場氏単独のオリジナルである。その上、足掛け半年にわたった第1話が、殆ど加筆されていないとくれば週間ベースを保てるかどうかの危惧は抱いて当たり前と言えるだろう。
しかし、第46号現在で第10話と休載もなく順調にこの複雑な五姉妹との相関関係を維持し続けられているクオリティは正直、脱帽に値する。お見逸れしたというか、春場氏を見縊っていた部分があったことを素直に詫びたい。

卒業~Graduation~を彷彿とさせる育成型ラブコメディ

ヒロインが5人で、皆赤点。ステータスは低く全員が留年コース。主人公は成績優秀で家庭教師を拝命。その設定世界観が、私がギャルゲーという分野に触れた作品の中でも特に思い出が深い、『卒業~Graduation~』にオーバーラップする。卒業~Graduation~5 人の個性溢れる問題児を皆、無事に卒業させたり、卒業を取っ越して結婚したりと多岐にわたるそれぞれのエンディングが楽しかった不朽の名作。これをプレイ したことのある教師の〝オッサン共〟ならば判ると思うのだが、5人も問題児を抱えていると恋愛どころではありません。一人と仲良くなると、二人ステータス ががた落ちし、一人が問題行動に奔る。翌週はそれらの尻ぬぐい。つきっきりで学問を教えてもステータスは思ったように上がらず、変なプログラムを組むと不 良行為に走ったり、行き過ぎれば恋愛脳になってしまって退学でゲームオーバーなど、よもや5人のハーレムとはほど遠い過酷な、それこそ生き残るために、武 器(ペン)を持って斗え! と叫びたくなってくる作品であり、それがまたリアルで面白いのである。
上杉風太郎も、どこかでこの「卒業~Graduation~」をプレイしてみれば、涙が出るくらい共鳴するのではないだろうか。志村まみはああ、四葉だ わ、中本静は三玖あたりかな?とか。まあ、このゲームの5人のキャラとは性格も違うが、問題児だというのは共通事項だろう。
レトロゲームに触れる機会がもしあったとするならば、五等分ファンはプレイする価値はあると思うのである。