【彼女、お借りします】人物考察③

七海麻美

七海 麻美
見下していた〝意思なき飼狗〟 意の儘にならぬ事を知り愕然となりて嫉視する
―――― 理由も告げずに別離を告げて一方的に遮断した和也の元カノ
         時を経ずの水原千鶴の出現に激しく嫉視しまた訝しむも、全ては覆水盆に返らず
公式ステータス等は現段階では公表されていないが、スタイル抜群だとされている。単行本CM等におけるCVも現在のところは設定されていない。

和也をキープ君として飼い慣らそうとするも、焦らし過ぎてその甘い檻から脱翔せしむ

第1話の冒頭。巻頭カラーの最中で主人公・木ノ下和也はフラれる。その彼女であったキャラが七海麻美(略称・マミ)である訳だが、どうも和也を振った理由が解せない。物語を読み進めてみれば和也のクズっぷりがよく分かるじゃないか、と言われるかも知れない。しかし、木ノ下和也の立場に立ってみれば本当に意味が判らない。飼われていた犬や猫が突然、見知らぬ山道に置き去りにされてしまったような感じなのである。七海麻美との再会 「好きな人が出来た」とは明らかに方便であって、その真意を推測すれば明らかに和也の性格を前提とした、「キープくん」に位置付けようとしているのが見える。

予め言っておくが、マミの内面や言動はそれほど多くはない。連載開始冒頭で理由もなく別離という場面から始まっているので、如何せんその別離の原因が見えないと、マミがビッチなのか、実は純情なのかすら判別が付かないと言える。ただ、この物語のメインヒロインが水原千鶴と言うことなのだから、必然的に〝負けヒロイン〟の位置にあると言うことは今更私が言う迄もない。

ビッチなのか――――SNSブロックの謎

マミはビッチである。と、判断してしまうのは実は性急で、軽佻浮薄な和也に気合いを入れ直すために一旦、別離という体裁を取った……というのはあまりにも男にとって都合の良い解釈だろうか。
SNSは昨今の主流とはいえ、それまで交際していた相手に対し露骨にブロックしてしまうと言うのは、余りにも当てつけがましい。私ももう居るし?
人間というのは、心底から嫌いになった相手のことは顔どころか存在そのものを思い出したくないと言うものである。ところが、マミはそういう訳でもない。和也を引き合いに出した友人達に向かって「あっそう」と無表情に不快さを覗かせるなど、表裏を使い分けている事がよく分かるが、それが和也を思っての表情なのか、和也はそれ程の存在ではない、と言うことを述べているのかなどさすがに読み切れない。
他に好きな人が~と言う割には男の影も見えず、SNSの方も所謂鍵アカと呼ばれる別アカウントでのみ毒を吐いている様相であって、こちらも本アカウントが見られないうちは何とも判断が付かないというのが正直な話である。
そういう周辺情報の少なさからでも確信的に言えることがひとつだけあるのだが、それはマミは和也との本格的な復縁を考えてはいない、と言うことである。
まあ、交際ひと月で理由も告げずに突然の別離、と言うのは如何に彼氏側に落ち度があるにしろ随分とした仕打ちである事は言わせて欲しい話であって、SNSの価値が嘗ての手紙や電話番号、Eメールアドレスにも匹敵する「繋がり」の確証的意義があるとするのならば、やはりブロック遮断というのは恋人関係にある立場としては断絶に等しいものであると考えると、これもまた酷い。
何も考えなければマミは悪女・ビッチと言われて然る可きである。

「は?」――――想定外の答えに露呈する不快さ

水原千鶴が同じ言葉を繰り返す癖があるように、マミにも特徴的な癖がある。「は?」という反応だ。「は?」
多分、多くの諸卿がそうだろうと思うが、人が話を振った際に、「は?」と反応されてどう思うだろうか。まずは大概、苛立ちを覚えるだろうと考える。実は表裏の使い分けをきちんとしているように見えて、マミはそう言う部分が脆く出る。相当な苛立ちである事が、彼女の動向を特化して見ていても判る。
想定している答えが返ってこないと、彼女は苛立ちを隠しきれない。相手、特に自分が下に見ている相手に対しては非常に短気な性格をしていると言えよう。
マミの登場回を咀嚼してみると、人当たりは良さそうに見えるが、その実は常に相手を下に捉えている。何が彼女をそうさせたのか、語られることがあるとするならば相当闇は深そうに思えるのである。

木ノ下和也、忠犬で下僕然としていながらも自らの意思を覚え離心す

和也との交際の端緒がどう言うものだったのかは後に語られることもあるかと思うが、もし和也の告白を意外とあっさりと受け入れたとするならば、またマミの性格がそこでよく分かると言える。
あまり深い考えがなく承諾したと言うことはないとは思いたいのだが、数ある告白者の中の一人である、的な感覚だったとするならば和也も浮かばれない。和也の性格が千鶴も参加した飲み会の場で明らかにされて行くのだが、マミとの肉体的関係を持ちたいと願望著しい和也の性格を巧みに利用した、代替要因として和也を位置付けていた。と言うのが割としっくりくる。黒マミ

今のところ、マミが他に想いを寄せる、または本命的な男の存在は見られないのだが、和也を自らの掌中で転がすことが出来る存在であることに彼女は満足感を得られていたと言う事かも知れない。
和也を突然フッたとしても、彼ならば泣き縋って復縁を申し立ててくるだろう、と思っていたとするのならば、随分と見縊られたものであるように感じてならない。
彼は仮にそうしたマミの思惑を大きく超えて、「レンタル彼女」である水原千鶴を得、マミと再び巡り会うことになる訳だが、その時の和也は既にマミの木偶としての存在ではない、意思のある人間としてマミに懸想をしているように見えて水原千鶴に心が傾いていた。マミほどの人物がそんな元カレの変化を気づかないほど愚かではないのである。
しかし、忠僕であるべきだった和也が自らの意思を持って水原千鶴へ心が傾くという事実をマミは許すことは出来ないのである。それが和也への本気と捉えるのは語弊があるのだが、少なくても和也に対して好意が残っているという考え方は少し可能性が薄いと思っている。
フォロワーが3人程度の鍵アカウントツイッターで和也への恨み言と、水原千鶴への敵愾心を燃やしているマミだが、それは自身の思い通りに事が運ばないという、単なる苛立ちから来るものであって、和也と千鶴の関係がどうということは本質的意味でマミにとってはどうでも良いことなのである。

和也を試す度に働く遠心力

たったひと月で和也を振ったマミの行動は、彼女が仮に和也のことを本気で好きである。という前提に立った場合は非常に拙速であったと言わざるを得まい。
まあ、マミが「レンタル彼女」というシステムを知っているかどうかは判らないが、いずれ水原千鶴がレンタル彼女のキャストである事を知り、それで和也や千鶴に攻勢を仕掛けてくるとしても、そのことを承知して互いに惹かれ合っている和也と千鶴にとっては詮なきことである。むしろ、マミの行動のひとつひとつが遠心力となって和也を遠ざけて行く事になるのだから痛し痒しと言ったところではないだろうか。
自らを盲目的に愛してくるのが男達、という驕り高ぶりがマミにある、と言う風には思いたくない気持ちはあるのだが、劇中の悪役を兼ねたサブヒロインの悲哀みたいなものがある。例えこの先、和也に対して「本当は和くんのこと好きだった」みたいなセリフがあったとしても、それは全く説得力を持たない。それ程、第1話冒頭での離別の経緯は、著しいハンディキャップとしてこのサブヒロインにのしかかっていたのである。