五等分の花嫁・人物考察Ⅳ

中野三玖

中野 三玖

五つ子の内、最初に風太郎に光を向けた連星の中心星。
  嚆矢の歴史問題が機運となりて風太郎に淡い想いを寄せ、その道を拓く

五連星の〝γ〟星、読者の高い人気を得て花嫁候補の先陣を堅調に維持する


●中野五姉妹のいわば扇の要たる三女、擒賊擒王の懐柔計を放つ上杉風太郎を悉く躱すも、歴史問題が琴線に触れ、惹かれてゆく

中野三玖(BEFORE)2017年第8号の読切版・五等分の花嫁では、非常に冴えない陰キャ的なキャラクタデザインをされていて、歴史(織豊時代限定)好きの歴女という設定も成されていなかった三玖。この時のメインヒロインは中野五月と言うことで、後の四人はそれぞれ萌え属性を付加されて描き分けられたと見て良いのだが、三玖だけは特徴が余りにもないから逆に極めて浮いていた。
連載版では「ロングヘア」「肩にかけたヘッドフォン」「見た目も大人っぽくさせる」など、大幅に修正された唯一のキャラクタで、読切版の加筆修正版ながら、彼女だけは実質、別な新キャラとして位置付けられた異色の存在である。

しかし、無口でクールな不思議系という設定は蹈襲され、それでも風太郎の動向を当初から気になっている様相を見せていたキャラクタでもある。
五姉妹全てが風太郎に対する好感度が最低で取り付く島もないとなると物語は動かない。五月は一応はメインヒロインという設定であるので、安易な接近は五姉妹を出す意味はなくなる。一花は長女であり姉的な存在であると言うことから見てもまず外れ、二乃は敵愾心が旺盛、四葉はスポーツ系と言うことで知性派の風太郎との早晩接近は違和感がある。と言うように消去法からすれば三玖が一番妥当であり、また三玖がここで風太郎への開心がなされなかったとするならば、一番に埋没する程、印象が薄いキャラクタであることは言う迄も無い。
歴史好きという事で風太郎が一番始めに出した歴史問題を契機に、三玖は風太郎に対し堰を切ったように心を寄せて行く事になる。三玖が上手く立ち回らなければ、中野家に風太郎在りという状況を作ることは設定上、困難を極めたはずである。三玖の存在は〝ラブコメ〟としての五等分を見るための試金石として用いられ、上手く作用したのである。

●陶隆房が繋ぐ、風太郎との絆。姉妹との架け橋

ジャニタレや今どきのイケメン俳優・美人モデル達に興味が集まる姉妹達に較べて、三玖はヒゲのおじさん(肖像画)。陶晴賢×中野三玖いわゆる歴史が大好き女子〝歴女〟を標榜するのだが、個人的には大概の歴女たちの織豊時代(安土桃山時代)限定の知識で「歴史」と一括りにして欲しくはない訳で。まあ、戦国時代・戦国武将と言っても、その戦国時代が応仁・文明の乱あたりから定義されるという説もあるとするならば範囲は広く、私は三玖の歴史好きというのは、一般論としての織豊時代であると思っている。

三玖が歴女に変化した素因は、四葉から借りた戦国ゲームというのだから切っ掛けとしては王道である。それに、こう言う学園物のテスト場面では主に歴史が用いられる事が多い(理系は余り見た事がない)ので、そう言う意味においても三玖が風太郎と馴染むのは予定調和だったと言える。
風太郎はそれまでは織豊時代に特化して詳しくはなかったので、三玖が出す武将の個別エピソードに口籠もる事も多かったが、三玖陥落の方策として知識を詰め込んだ。陶弘護肖像年表における歴史の出来事が三玖の脳裏に全て入っているのかどうかは判らないが、日本史の成績だけに特化すれば、三玖は風太郎とも渡り合える資質を備えていることは間違いがない。
厳島の戦の問題で、三玖がわざわざ屋上に風太郎を呼び出し、「陶 晴賢」と〝告白〟したのはある意味、好きの変化球である事は言う迄もなかろう。
それまでの経緯を見て、四葉が問う「三玖の好きな人」が風太郎であると言うニュアンスは余り感じられなかったが、陶晴賢が三玖の内心にある風太郎への想いを惹起させる切っ掛けになったのは面白い。
史実では名将・陶弘護が大内氏家宰クラスになり、孫の隆房(晴賢)も家宰クラスとなって最期は祖父と同じ非業の死を迎えてしまうのだが、漫画とはいえ、ここで陶晴賢が上杉風太郎と中野三玖の間を取り持ち、それを契機に他の姉妹との絆構築の礎となる役割を果たすというのも、武将冥利に尽きるというものではないだろうか。

三玖、堅調に風太郎に対する好感度を上げてゆく

言い方をよくすれば純情。悪い言い方をすればチョロい。三玖は五等分の花嫁のヒロインの中でも、目立って風太郎への好感度が上昇してゆく。彼女が風太郎のさり気ない気遣いや仕草に頬を染めてデレるという場面は枚挙に暇がない。凭れ掛かられる三玖
それが五姉妹の中で特に人気を集めている原動力でもあるのだが、見方を変えれば三玖の想いはインパクトの強さに欠ける。
現状、三玖が目立っているのは、他姉妹が風太郎に対してそれ程想いを強めているような描写がないからとも言え、他がそれぞれに風太郎にデレる描写や回数が増えると、その支持も分散してしまう可能性は否定できないだろう。

ただ、そうした中でも確実なのは一番始めに、また目に見える形で風太郎への好意を表現しているという点でのアドバンテージは大きく、目下花嫁は三玖であるという可能性は目を惹いて現実味があるようだ。
五姉妹の丁度中間に位置するためか、風太郎に対する動向も姉妹をノーマライズさせたようなタイプであり、二乃や五月のような嫌味な部分がない。彼女が物語を通して、風太郎の中野家への仲介役として重要であるのは確かで、姉妹の好感度上昇は必然的に三玖の好感度も上がるというシステムが成り立っているように感じた。

風太郎と結ばれるためにはどうするか

風太郎の花嫁候補として現状、ぶっちぎりで先頭を走っている三玖だが、だからといって完全な訳ではないのは当たり前の話。風太郎のメルアドを知って・・・先ほども少し言ったが、今は他の姉妹達が目立って風太郎への想いを表していないので三玖が一人目立つと言った感じである。
三玖の問題は風太郎への想いを八分表現して止めてしまう、と言ったところだろうか。四葉のように全身全霊でアタック、みたいな感じはなくても良いが、アクの強さというものが足りない。
物語当初からのアドバンテージをそのまま維持して完走するという可能性に賭けるか、他の姉妹の支援を受けて結実するか。と言うことだが、長期連載を標榜するならば、三玖ありきで進めるというのも面白みに欠ける。
線香花火やメールアドレスなど、三玖にとっては風太郎に重なるアイテムに思い入れを深めるシーンが印象的であるので、こういった想い出の蓄積で風太郎に三玖のことが好きであると確信させる方法がベストかな、と言った感じだろうか。

主人公に一番近いキャラクタなだけに、一番埋没しやすい危険性を孕む。生みの親である春場氏自身の舵取りが問われるキャラクタとして注目される。


では最後にひとつ、三玖に問題を出そう。ネットなどで検索せずに、自力で解いて欲しい。もし良ければ、この記事を読んでいる、そこの三玖ファンもどうぞ(笑)

Q.史実では文武に優れた武将であり、また刀剣デザイナーの顔も持つ、大河ドラマにも結構長い期間出たことがある武将は誰?