五等分の花嫁・人物考察Ⅴ

中野四葉

中野 四葉

明朗闊達で男子からの人気も高いと見る、未曾有の大器を秘めし五連星最大の明星
 初手から好意を寄せるも、一諾千金。文武両道の資質を風太郎に鍛錬され、開花してゆく

五連星の〝δ〟星、連星最大の光度で風太郎を示して、希望を繋ぐ


●中野五姉妹の四女、険阻なる師弟関係に悩む主人公に好意の魁を呈し、融和の嚆矢を放つ

四葉ファーストコンタクト

良く言えば天真爛漫、悪く言えば猪突猛進。四葉のファーストコンタクトは、始めから針の筵のような風太郎にとっては一種の緩衝材的役割を果たしていたと言える。確かに、個々の五連星がそれぞれ際立つ個性を発揮すると言っても、全員が全員反風太郎モードであっては話が進まない。
四葉は当初から風太郎に対して嫌悪感はなく、テストの採点用紙を見て好感度が高めに設定され、風太郎と五姉妹との接点を作ったキャラクタであるが、穿った見方をすれば、初対面のいわゆるぼっち男子生徒に対して表裏無く好意的に話しかけてくる女子などというのは、現実的には殆ど存在しがたいものであるし、またラブコメというジャンルにおいて、極めて王道のテンプレートに沿ったキャラクタであると言えよう。

●好感度が高止まりのネック、伸び代が少ないキャラクタ

ドッペルゲンガー?

四葉は確かにラブコメのヒロインとして非の打ち所が見当たらないキャラクタのように見える。しかし、連載当初からそう完璧では逆に彼女が更に主人公・上杉風太郎に心を寄せてゆくエピソードの構築余地が少ないと言うことも意味している。
特に、二乃や五月など初期好感度の低い設定のヒロインの伸び代は際限なく広いが、四葉の場合は目に見える好感度アップがなかなか表現しにくい。それはつまり、埋没の懸念というのが常に付きまとうという意味でもある。
四葉ファンには申し訳ないが、決して四葉をディスるという意図は全くないので誤解無きように。という前提にして書いておこう。
他の姉妹と比較して、ストーリー構成という意味で、四葉が突出している部分は何処にあるのかという話だ。確かに、序盤から風太郎には協力的で、「抱きしめて良いか?」などと本気とも冗談とも取れる本音を引き出したのだが、四葉自身としては、風太郎に対して恋愛的な感情としての好意よりは遙かにかけ離れた、〝友人以上・恋人未満〟を旋回しているように思えてならないのである。
三玖や一花のように、目に見える風太郎への好意への切っ掛けがなかなか摑めないし、あったとしても見えにくいというのが、四葉推しにとってはやや苦しい展開だろう。

●シスタープリンセス「衛」系の呉下の阿蒙からの脱却を目指し、第3に甘んじる覚悟

才能の無い私を・・・

スポーツ・元気系のヒロインというのは、ラブコメディのメインジャンルとしてはどう言う立位置なのかという素朴な疑問が私にはあって、偏見に過ぎないかも知れないが、あまり四葉のようなタイプというのは物語としても「賑やかし」程度に収束し、海千山千の恋愛術を駆使してくる他の姉妹達にガチで対抗できる力があるようには少し物足りない部分がある。
だが、五つ子を五連星に喩えている私としては、連星の中で一番の輝きを放っているのは、他ならぬ四葉であると言うことは断言しても良い。それが風太郎との最終的な結実に結ぶと言う事はまた別の話としても、風太郎が中野家に参入してくることを快く思っていなかった、二乃の言葉を代表して他の姉妹達とは一線を画して「上杉さん」と思慕し続けている彼女の存在は紛れもなく大きい。
こう言うジャンルにおいていつの間にか埋没してしまう、ヒロイン争奪レースから初手から脱落しているというケースはままあるのだが、四葉はどうしてなかなか頑張っている。アホの子、お人好し、勉強が苦手で、実力テストでも最下位を堂々と獲得し、宿題全部間違っていた、などと高笑いする四葉の真意は、上杉風太郎への表裏無き思慕に裏打ちされた、未曾有の大器の片鱗を感じるのである。

●上杉風太郎と結実する方法を検証する

リボンを直す

四葉が風太郎の単独花嫁になるにはどう言う道筋が良いのだろうか、という妄想だが、取りあえず至上命題である高校無事卒業。その目処を立てて四葉自身の進むべき道を一緒に考えてあげられる時間があるかどうか。に掛かっていると考える。
彼女は何度も言うようだが、当初から風太郎に対する好感度は高いので「見直す」ことによる惚れ直し、と言う効果はあまり期待が出来ないのである。
バスケットボール部の入部勧誘を断腸の思いで断って風太郎への恭順を誓ったという事実の重さを、風太郎自身は感じなければならない。
その上で、四葉も努力を重ね、風太郎もスポーツの名の通りに二人三脚で一つ一つの勉強の課題を乗り越え、余裕が出来た頃に四葉に本当の夢に向かって後押しをしてゆく……みたいな展開の方が、個人的には見たい。

何度も言うようだが、四葉はただ、元気が良くて色気というものを(姉妹を比較して)あまり感じない。彼女を中軸に置く恋愛展開はなかなか厳しい環境になることが予想されるのだが、もしも四葉が最終帰結者として終わった場合は、拍手喝采を贈って止まない。