彼女、お借りします 第3巻~人物考察④――更科 瑠夏…和也と水原の関係を看破した投石役

彼女、お借りします 第3巻
▼彼女、お借りします 第3巻
評価★★★★

一応、純愛がコンセプトだが、実在の風俗業『レンタル彼女』をモチーフし、実在の風俗店との、事実上のコラボレートを成しているラブコメである。
一挙二話連載の後半部分である第15話から新キャラ「更科瑠夏」が物語に絡んでくる第23話までを収録している。
フェリーから海に転落し、溺れかけた水原を救い出す和也。人工呼吸という形であれ、初めて唇を重ねる水原。それを契機に、彼女自身も心裡の奥で和也を意識するようになる。
そんな中で、いつもと変わらない様に振る舞う二人。和也の祖母・和から、温泉旅行に来いと言われて行った温泉旅館で……。
物語の後半に新キャラである謎の少女「更科瑠夏(ルカ)」が登場。親友・栗林の彼女という事だが、和也と水原の関係を一見で見破るという鋭い洞察力で、和也に危機が迫ろうとしていた。

この巻に到り、水原のライバル的存在である七海麻美の出番は殆ど失われ、物語上としても、和也の心情としても端役に転落して行く事となる。
この作品を読むに当たって、予め解っておかなければならないのは、構成上、現実の『レンタル彼女』の制度を利用しているだけであって、内実はそうした『仕事』とはかけ離れた『恋』の波瀾話である。「レンタル彼女」という風俗嬢という定義が、この作品のキャラクタにはどうも稀薄に感じる。この作品を読んで、レンタル彼女というのはこう言うものなのか、と勘違いしてはならない。


【彼女、お借りします】人物考察④――更科 瑠夏~親友・栗林に紹介された「彼女」。その内実は水原と同業。和也の心かき乱す猪突猛進ガール

更科瑠夏(るか)

更科 瑠夏 
親友・栗林駿のレンカノとして和也の前に現れた〝猪突猛進ガール〟
 水原千鶴に同業のフィーリングを感じ、和也との相性の良さを真に受けて和也の真正恋人の成ろうと図る
――――親友思いの木ノ下和也、彼の親友・栗林にようやく出来た恋人「更科るか」
         その実情は和也と同じレンタル彼女。和也への恋心もまた、猪突猛進が生み出した幻想なのだろうか……

公式ステータス等は現段階では公表されていないが、女子校生の制服がよく似合う童顔、スタイル抜群だとされている。単行本CM等におけるCVも現在のところは設定されていない。


往来でぶつかり尻餅をつき、ミニスカートからパンツを見られて「変態」と一方的に烙印を押された木ノ下和也。更に親友・栗林の「彼女」と紹介されるも水原千鶴の正体を速攻で看破し、和也と水原千鶴の偽装恋人関係が、白日の下にさらされる危機をもたらす、青天の霹靂か猪突猛進とも言える美少女。
まあ、形はラブコメディだから新キャラの美少女が続々と投入してくるのは構わない話だが、七海麻美よりは俗に言う「負けヒロイン」としては頑張って欲しいと思わせる、またこんな性格はウザいと思うか、もっと押してくれても良いんだよと思う勢力に別れやすそうなキャラクタである。

勢いが昂じ、熱病の如く和也が好きという思い込み?

改めて認識しておかなければ成らないのは、ルカ自身もレンタル彼女業に従事する「風俗嬢」であると言う事である。出会い頭に衝突して然も運命的な出逢いが……! などという70~80年代少女漫画的なものとはほど遠い立位置にある。しかし、私鷹岑自身、風俗関係の店舗や施設を利用したことは一度も無いので全くもってそう言う知識は人伝に頼む他がないのだが、ルカのような性格が「レンタル彼女」として多くの男性顧客の一日を満足させることが出来るスキルに富んでいるのかと問われれば、私自身としては些か疑問符が付く。
レンタル彼女の指名する紹介文に長所が熟熟と書かれているのだろうが、一連の流れからして咬ませ犬にさせられた「栗林駿」に対するシンパシーの方が大きいと感じるのは必ずしもおかしな話ではないと思うのです。
和也を何を以て測っているのかは知らないが、90点以上は初めてなんです。という意味不明の点数付けで交際を求められたら、どう答えたものか。
見た目が、往来の目を惹く美少女だからオッケーを出すか。スマホのアプリか何か知らないが、自分の意思ではなく機械が出した相性度だから、それを盲信してつき合いたいとせがむというのは、個人的には全く嬉しいとは思わないのである。猪突猛進ガール、能くこれで今まで貞操の危機などに晒されなかったものだと、感心する。

お試し彼女、仮の彼女カリカノ~都合のいい女に能わず

和也が水原を好きなのは知っている、それでも良い。「ドキドキしない病」という先天性の病気を抱え、格好良く言えばアイアンハート。そんな彼女が初めて木ノ下和也に対してドキドキを覚えた。アプリの数値は、心拍数を図るものだったのか、と言うのはどうも当て付けの理由のように思える。薄幸の美少女と言うにはまだまだ修行が足りない。
ある意味、吊り橋効果のような数値が真実と思い込み、仮初めでも良いから和也の彼女にして欲しい、とせがむのは、男の一読者としては嬉しいが、同時にルカの父親に比する程の年齢に近いとも言えるだろう私からすれば、ルカを都合の良い女に落ちぶらせる事は絶対に許すことは出来ないのである。
まあ、この「彼女、お借りします」のコンセプトや主人公が木ノ下和也である、というアドヴァンテージもあることからルカが和也に強い執着を抱くのは致し方がないとして考えても、負けヒロインの王道だけはしっかりと歩んでいる事実を何とかして欲しいという気はする。親心というのは語弊があるが、ルカには和也でも栗林でもない、本当にルカを想い、また彼女の猪突猛進さの終着点を示すことが出来るキャラクタの登場によって倖せになって欲しいと想っているのだ。

結びの神か、疫病神か。ルカ、蟠りを次々に指摘し、和也・千鶴の本心をまさぐる

ルカ自身、自分は和也と一緒にはなれないという確信に近い懸念があると言う風に、私には思える。それは結局、無駄な努力と他人には映るわけだが、それでもその適わぬ思いに立ち向かい続ける少女の姿に感銘を受けるというのもまた事実のようであろう。
それにしても、このルカに対しての水原千鶴の余裕綽綽とした態度は鼻に付く部分も否めない。
和也に対して仕事を超えて人間として惹かれている千鶴が、それでも「レンタル彼女」だからと割り切って見ているという部分が、余裕が成せる技なのか、千鶴自身が潜在的にある「和也独占欲」の片鱗なのか、そういう二人の隠し通そうとしてるダークな部分のベールを剥がす役割として見れば、なかなか良い仕事をこなしていると言って過言ではないだろう。