達増拓也岩手県知事による岩手振興プロジェクトのアンソロジーコミック第七集

コミックいわて なななっ(第七集)

▼コミックいわて なななっ (第7集)

達増拓也岩手県知事肝煎の岩手振興プロジェクトの一環として立ち上げた、〝コミックいわて〟も第7集に至る。
岩手県出身作家による同人誌色の強かった初期と較べて、岩手に縁が深い他県などの作家も終結した連名。同人誌アンソロジーとしての立位置は維持しつつ、全体のアトモスフィアは、ラブコメディやイケメンの活躍など、やや少女向けとなっている。
大手漫画雑誌への掲載経験者や岩手県が実施している「いわて漫画大賞」受賞者などの連名が目を惹く一方で、吉田戦車・飛鳥あると氏などの古参の名前が消え、そのだつくし氏以外は、ほぼ若手で固められたのが特長。
個人的に好きな筆致・作品作家は、〝ナリタカ〟氏の「ムカデ姫より」、福盛田藍子氏の「なぐさめ日和」、朝陽昇氏の「馬コの日」、金黒氏の「マヨイガの彼女」、蓮まこと氏の「おくないさま~花巻鹿踊録~」、仲村すひの氏の「うしわか道中記」、クリストファー・アイゼンフィールド氏の「トオノ君、河童だよね!?」、そのだつくし氏の「平成岩手御伽噺」、ゆうしよう氏の「スーパーハイテンショーチ」である。
飛鳥あると氏の「キリコ、閉じます!」が無いのが残念。故に、星評価は4とさせて頂いた。



ドラゴンクエスト4コマ漫画劇場に比肩するか。達増氏の動向次第のアンソロジー計画

達増岩手県知事の肝煎で始まったとされる、コミックいわてシリーズと、「いわて漫画大賞」。漫画というサブカルチャーに焦点を置き、地域振興に寄与せんとした達増氏、1990年代に私が地元新聞紙の論壇に「岩手は漫画やアニメの先駆的発信地としてあるべきだ」と起稿し、結局は没られたが、達増氏はその頃から一貫してい思っている私の考え方を叶えてくれているので非常に嬉しく思っている。
別冊少年マガジン(講談社)において、2018年8月現在で、福島県・会津若松市を舞台とした、作井ルビ氏の「あかまつ」という日常系ゆるふわファンタジー作品が連載されているのだが、このコミックいわてシリーズにおける諸連名陣も、そうした大手全国漫画誌に連載を以て然る可き作品が多いと愚見する。

それはともかくとして、地域振興のためのコミックアンソロジーが単行本として7集を突破するというのもなかなか珍妙なことである。1980年代終盤から同人誌的なテイストで始まった、「ドラゴンクエスト4コマ漫画劇場」も派生作品も含めれば、60冊を超えている。達増知事の肝煎とは言うものの、仮に知事が代わればコミックいわても終わる、というのは些か悲しい気がする。

〝ナリタカ〟氏、中央で活躍するべき人材か

今回のアンソロジーで、個人的に注目している作家が、ナリタカ氏。「ムカデ姫より」という伝説を題材にした地元紹介型のラブコメディ。何が気に入ったのかと言えば言うまでもなく筆致である。本作のストーリー構成もファンタジーながら、最後はハッピー(?)エンドという終始が実に良い。少年誌系か、少女誌系かと問われれば非常に迷うが、別冊少年マガジンに於ける作井氏の福島振興漫画に対抗する形で、ナリタカ氏にも中央の漫画誌に連載を持ち、岩手振興の若き旗手として活躍して欲しいところである。
ムカデ姫が妖婉で美人なんだよな。それが凄く良いんです。単純なんですよね、気に入る方向というのは。漫画ですから、第一義は、筆致です。