ヒロイン・海藤不二恵が一切出ない異色の新展開

ストーカー行為がバレて人生終了男 第4巻

ストーカー行為がバレて人生終了男 第4巻

門馬 司・芥瀬良 せら両氏著/評価★★★★★
主人公・影沼秀夫が社会人となったという舞台設定の新展開。
大手家電メーカーに就職したのは良いが、学閥・仕事能力の差違を突きつけられ、先輩からは嫌味やいびりの連続。同期達からははんつけにされ、五月病まっただ中の影沼には桎梏の地獄。恋人として在りたいと思っていた海藤不二恵は芸能界に復帰し、音信不通。
腐れる影沼だが、元ストーカーたる血が沸き立つのか、新たな嗜好があった。
無能な影沼を常に励ます、男性社員に大人気の美人チーフ・猪狩京香。影沼と同期入社の美人・原崎叶のミステリアスなベール。猪狩に降りかかる悪意の片鱗。傍目から見れば不自然な形で主人公・影沼はその片鱗を掴み、猪狩チーフを救わんとする。
影沼のストーキングのスキルを活かした猪狩失脚の陰謀を暴いてゆくストーリーは、推理探偵ものに他ならない。サブタイトルとして「~影沼秀夫の危険なストーキング探偵事件簿~」とでもすれば面白いかも知れない。
芥瀬良せら氏の秀麗な筆致で描かれる新展開。個人的に気になっているのは、影沼と海藤の関係だ。今巻では海藤はリアルな出番はなかったが、果たして……。何だかんだ言っても続きが気になる一冊です。

海藤不二恵、メインヒロインとしながらも雌伏す

新展開となった第4巻、竟に肉体関係を持った海藤不二恵が「芸能界復帰」という理由で一時的に退場して暫である。華胄界に大いに天性の資質を見出す、海藤と比較して、主人公・影沼は同期組ワースト。同期組グループLINEにも加わることが出来ないはんつけ状態。
チーフ・猪狩京香の影沼支援行動は社交辞令そのものだろうが、果たしてどう捉え動くのか。学閥に凭って影沼をアウトオブ眼中に仕立てる美人同期・原崎叶に浮上したオフィスラブ(不倫)疑惑。影沼が女性として意識しているとは思わないが、自分を気にかけてくれている猪狩に対する〝昔取った杵柄〟が奏功し、猪狩の危難を極めて危ない形で救い上げるという構成は事実、非現実的である。
非現実であるからこそ、物語はストーカー行為を反面利用した探偵物語として進行している。タイトルそのままに囚われては意味が不明だが、「ストーカー行為」という言葉が、必ずしも主人公・影沼秀夫であるとは限らないというのは、第一部・海藤篇で示された通りである。この作品は推理ものと受け止めるべきであり、作画の芥瀬良氏がどこまでサービスカットを描けるかという次元の問題だろう。

海藤不二恵は芸能界に復帰したが、影沼への想いは依然とあると考える。ようするに放置プレイというやつだろう。影沼が猪狩ないし原崎に浮気しようものならば手痛い制裁が下されるような気がする。表に出てこない、メインヒロイン・海藤不二恵。単行本第4巻の表紙が、猪狩京香だからといって、海藤不二恵アウト、猪狩京香インと捉えてしまうのは早いぞ。