週刊少年マガジン『ドメスティックな彼女』
 作者・流石景氏に対する最初で最後の諫言上疏書文・全文

謹啓
『ドメスティックな彼女』 流石 景先生

流石景先生(以下、氏)御多忙の中、お手にとって頂き、誠に恐縮でございます。
私は一読者の鷹岑昊と申します。
前作・『GE~グッドエンディング~』以来、氏の作品を読み通している者で、現行作『ドメスティックな彼女』も散見させていただきました。先ずは6年間に及ぶ連載完走を言祝ぎ申し上げます。

扨て、以下に寄せる文にお目を通していただく前に、御無礼の段を平に御容赦致しますとともに、途中で激昂し破却したり、くしゃくしゃに丸めて芥箱に投棄、シュレッダーに掛けたりすることのないよう、切に祈念致します。また、これは氏に対する作品を思えばこその内容なので、それを前提に話させていただきます。

私は氏がSNS・Twitterを開設されて間もない頃から、良く感想やら意見を述べ、良くリプライを返して下っていたのが今でも鮮明に憶えております。
しかしながら、いつの頃からかは存じませんが、私のSNSアカウントが、氏の公式アカウントよりブロックされており(アカウントを変えた経緯もあり、氏へのリプライ等は飛ばしておりませんでした)、驚嘆と悲嘆、それ以上に実に哀愁を感じる仕打ちに非常に落胆と失望を禁じ得ません。
『ドメスティックな彼女』に関しては、当初より多くの批判や、中には作者である氏個人攻撃とも取れる言論がネット上を中心に跋扈し、かつてそうした誹謗中傷に挫折したことがあると語られた氏のリプライから、今度は心を広く持ってそうした誹謗中傷には負けない。と宣言されておりましたね。
そう言う「初心」を、今の氏はお持ちでしょうか?
2020年6月3日の氏のツイート(別アカウントにて閲覧)で、「色んなご意見あるでしょうが、私も担当さん方も信念を持ってここにたどり着きました。ですのでどう思っていただいても構いません」と、あります。
その信念とはなんでしょうね? どう思っていただいても構わないのならば、何故作品に対する批判や問題点を指摘するアカウントを次々ブロックし、氏の作品を妄信的に賛美・阿諛追従するような嬖佞の輩のみに阿るのでしょう?

確かに、私はドメスティックな彼女のあり方に非常に批判的な見方をしてきた者の一人です。しかし、氏個人を人間的に、またその人格そのものを攻撃したことは一度もなく、作品そのもののあり方、進め方を批判しただけに過ぎません。個人中傷ならばまだ判りますが、作品に対する批判意見や、問題点指摘の意見が挙げられたからそいつはブロックする。と言うのはプロのクリエイターとして如何なものかと、その度量に疑問を感じます。

週刊少年マガジン2020年第27号の歌手・美波氏との幇間対談で、『ドメカノのキャラは、一般的な正しいこと以外の行動も取るので、時に誰かの反感を買うこともあるかも知れませんが(中略)『ドメカノ』はそこを描きたくてスタートした作品でもある』と述べられています。
つまり、誰か(読者)の反感を招きかねない覚悟とそれが「信念」ですか。で始められたわけですよね?
それでいて、作品を進めていくうちにその反感・批判・矛盾等を指摘してゆく読者達が氏の予想を遙かに上回る声となり、かつてのトラウマをフラッシュバックさせた氏はそうした声を排除してゆくことにした。と邪推します。
しかしながら、氏のそうした行動は対談で示したポリシーに自ら反していると思われませんか?
氏と美波氏の幇間対談は割愛して、氏はこうも言っております。「私が作品を作る時って『こういうタイプの作品はまだ雑誌にないぞ』という考えから始める」
しかし、巷間ネット上でも一般論として述べられているように、「よくクリエイター達が〝私は誰もやらなかったことに挑戦するぞ〟と言うが、大概それは、先人達が思いついたことだが、敢えてやらなかったことである。〝王道〟が何故面白いのか、それ(基本)が解らない作家に、面白い作品を作れるわけはない」と断じています。
そして更に氏は美波氏の「予想できない部分が好きでした」という言葉に対して、「予想の斜め上を行かれて、ああやられた!と感じる時だったりする」と述べていますが、ドメスティックな彼女は俯瞰するに氏の標榜する斜め上どころか、斜め下の展開の連鎖がつづき、氏が頑然として主張する、「信念」の負の部分だけが、不本意にも強調されてしまったのでしょう。
GE来の(自称)古参の氏の作品が好きだった私をブロックするほど、氏は余程強い「信念」でドメスティックな彼女を、豪華絢爛な終幕を迎えるのでしょうが、今までネット上や、SNS、感想考察ブログなどで示されてきた多くのそうした批判や矛盾、忠言・諫言を悉く排除し続けてきた独善的な作品が、漫画史に語り継がれる名作たり得るとは、私はどうしても思えません。
氏が今行っていることは、かつてあなたが心折れそうになったとされるバッシングの反攻だと、私は思います。

内容はともかく、『ドメスティックな彼女』を大好きなファンも多くいるでしょう。彼らの声が、氏の創作意欲、そしてその「信念」とやらを強く後押ししたのかも知れません。
しかし、『ドメスティックな彼女』のクオリティを高めようと必死に批判・諫言・問題点を指摘した〝ファン〟にブロックや封殺等と言った愚行はするべきではなかったですね。
氏や、担当編集の方々の「信念」は、遍くドメスティックな彼女、広義的に週刊少年マガジンの読者に伝わりましたか?
氏の独善的な思いがマガジン読者、ラブコメを愛好する読者に上手く伝わるような最終回を期待して、読者の端くれである私の諫言上疏を締めたいと思います。
もし、ここまで読んで下さっているならば、心から感謝致します。次回作が更によりよいものになることを衷心より、祈念したいと思います。ご清覧、有り難うございました。

敬白

令和2年5月17日(日) 鷹 岑  昊