長瀞はやせと、長瀞氏考

イジらないで、長瀞さん 第8巻

▼イジらないで、長瀞さん 第8巻
評価★★★★★ / ナナシ氏

今巻はマラソン大会での美術部長との戦い、ソフトクリームデートを経て、風邪で休んだ長瀞の家に見舞い訪問するという形の流れとなっている。新キャラは長瀞の姉(通称・姉瀞)。メインヒロイン・長瀞さんのフルネームが判明する回である。
ギャル系のメインヒロインと、陰キャ系の主人公という意味では、ナナシ氏が寄稿した「やんちゃギャルの安城さん」と比較されるが、主人公同士で比較すれば「イジらないで、長瀞さん」のセンパイと、「やんギャル」の瀬戸とは、先輩の方が比較的親和性が高いと見て良いだろう。ヒロイン同士を比較すれば、長瀞と安城アンナは、後者の方が圧倒的に主人公を圧していてヒロイン性が高くなっている。ただし、其の分主人公・瀬戸が陰キャ性を強くしているという感じでバランスを取っている。マガジン系の強みでアニメ化にたどり着き、長瀞役は人気声優・上坂すみれ君が起用された。


長瀞氏考察

東北出羽に長瀞という地名があり、清和源氏義光流足利氏支族斯波氏分家として、室町幕府から羽州探題を拝命した最上兼頼(斯波兼頼)からその支配下にあったとされる土豪・長瀞氏が現在の山形県東根市に勢力を持ち、出羽最上氏第10代・山形城主最上義守の子・義保が長瀞氏を継いで最上八楯の一翼を担ったと言うが、記録が散逸しているために史実かどうかは議論の分かれるところだそうだ。いずれにしろ、長瀞を名字とする有名人と言えば、この長瀞義保という人物なのだという。
「イジらないで、長瀞さん」で描かれる長瀞氏は、主人公のセンパイが、ナナシ氏のpixiv公式サイトで「八王子」という名字である事が判っているので、埼玉県秩父郡にある長瀞町という地名が由来である可能性が高い。ナナシ氏の出身地方が名字と比定するならば、件のように関東圏と言うことになる。最上八楯・長瀞氏を意識したものでは決してあるまい。

長瀞はやせ(早瀬・湍)と八王子先輩

昨今のラブコメディでは、ヒロインのみならず、主人公の名前すらスンナリと出てこない(敢えて出さない)パターンが多くて困る。長瀞はやせ(長瀞湍・長瀞早瀬)も名前が判明するのに8巻も懸かった。実質公式としてある八王子先輩の実名も、いつになったら公表されるのかが楽しみでもあるし、フレンズ・姉瀞の名前も気になる話だ。
同じマガジンポケット系での連載で人気のある「可愛いだけじゃない式守さん」の主人公・和泉と、ヒロイン・式守。当該「イジらないで、長瀞さん」と比肩される先述の「やんちゃギャルの安城さん」もヒロインは安城アンナとして名前は出ているのだが、主人公が「瀬戸」という名字だけで、名前はまだ出てきていない。アンナフレンズの豊田・知多、瀬戸親友の犬山など、愛知県の地名と言うくらいしか共通点はないのである。
名前は引くネタとして重宝されるのか、敢えて必要のない項目とされているのか。意見は分かれるところだが、読者としてはやはりフルネームくらいは早めに分かっていた方が色々と構想・妄想の幅が広がるというものである。

この作品の八王子先輩は陰キャ系とは言うが、やんギャルの瀬戸と比較すれば遙かに積極的ではやせたちとの親和性は比較にならないほど高いと考える。巻数・話数との単純比較としての話だが、メインヒロインを想うという点では一致はしているものの、フレンズたちとの交流も含めてはやせへの想いを認識しているという点においては八王子君の方が数段勝っている。
いずれにせよ、学園ものには卒業という時間制限がある。長期連載になりにくい、或いは長期連載はそぐわないという理由はここにあるわけだが、そういった意味において、様々な設定をもったいつけるのは、文字通り勿体ない。進展させるという意味においても、謎は一つ一つ解明してゆく時期に来ているような気がする。